キース・リチャーズが語る「死」との向き合い方、ストーンズ新作の行方、クラプトン騒動

キース・リチャーズ、2022年3月10日撮影(Photo by Anthony Behar/Sipa USA/AP)

 
今は亡きチャーリー・ワッツはかつて、ザ・ローリング・ストーンズのギタリストであるキース・リチャーズの自滅的な行動には、常に「生きることへの強い意志」を感じると言った。しかしキース自身には、さほど自覚がない。「人は皆、それぞれのやり方で成長していくもんだ。たぶん俺は馬鹿だから、生きるか死ぬかの状況に自分自身を追い込んでいるんだと思う。でも一度きりの人生は楽しまなきゃ損だ」と彼は言う。

この最新インタビューでキースは、リリースされたばかりの1992年のソロアルバム『Main Offender』30周年記念エディションや、彼のソロ活動を後押ししたミック・ジャガー、『Gimme Shelter』の誕生秘話、そしてストーンズの将来、エリック・クラプトン、ポール・マッカートニーなどについて語っている。

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ーソロデビューアルバムの『Talk Is Cheap』は、言葉には出さなかったものの、「くたばれミック」的なムードが漂っていました。でも、ストーンズが再結集して制作したアルバム『Steel Wheels』に続いてリリースされたソロアルバム『Main Offender』は、違ったイメージを感じられます。ミックと和解したことで、ソロアルバムへ注ぐエネルギーに何らかの影響があったのでしょうか?

キース:俺としては「ふざけるなよ、ミック」という気持ちが今でも結構ある。もちろん、それがメインテーマではない。むしろ、その時期にソロアルバムを作らなければならない状況に腹を立てていた。ソロでの活動など全く考えていなかったからな。でも振り返ってみると、ローリング・ストーンズという殻に閉じ込められていた俺たちは、それぞれが翼を広げて飛び立たねばならない時期に来ていたんだと思う。それで俺が選んだのがWinosで、大いに楽しんだよ。スティーヴ・ジョーダンとは今でもストーンズで一緒にやっているが、それはまた別の話だ。Winosはみんないい奴らで、もともと知り合いだったり友人同士だったりした連中さ。こんなメンバーが集まれたのは、俺にとって奇跡としか言いようがない。今でもその一瞬一瞬を大切にしている。「深入りしすぎた(訳註:収録曲のタイトル「Runnin’ Too Deep」)」のさ。



ー『Main Offender』を聴いただけでは、レコーディングされた時期を言い当てることはできません。時代すら感じさせない作品です。

キース:その通りだな。時代を超越した作品だ。結局は大半のストーンズ作品も同じさ。『Main Offender』を聴きながら、ワディ(・ワクテル)やアイヴァン(・ネヴィル)やスティーヴ(・ジョーダン)が「キース、このアルバムは一時的なブームでは終わらない。後世まで残る作品だ」と言っていたのを思い出した。面白いことに、その通りになったな。

ーレゲエナンバーの「Words of Wonder」では、ベースも弾いています。あなたがレゲエのベースを弾くのは、とても珍しいと思います。この曲でベースを弾いた時のことは覚えていますか?

キース:初めはワディ・ワクテルが弾いていた。実はずっと前から、ベースを弾くのが好きだった。ストーンズでの話だが、「Sympathy for the Devil」のベースは俺が弾いている。



ー「Jumping Jack Flash」や「Happy」などでも弾いてますね。

キース:ああそうさ。ベースが好きなんだ。転向しようかと考えたりもする。そして「Words of Wonder」だ。ワディと書いたんだが、本当に魅力的な曲だ。俺は何年かジャマイカに住んでいたこともある。「俺がベースを弾く」と、自分で言い出したのさ。レゲエは、ベースが中心の音楽だ。出たり入ったりで、合わせて10年ぐらいはジャマイカに住んでいた。(レゲエ・ベースのレジェンド)ロビー・シェイクスピアとは親友だった。つい最近逝っちまった。彼の冥福を祈っているよ。何だかわからないが、いつもベースに背中をなめ回されているような感じがするんだ。わかるかな、この感覚が。

ー何だか、いやらしい感じですね。

キース:そうさ。いつも後ろから追いかけて来るのさ。わかるかい?

ー面白いですね。ストーンズであなたがベースを担当した曲や「Happy」のスタジオバージョンを聴くと、あなたのベースのビートがかなりビハインドしていて、曲のサウンドにすごくマッチしているのがわかります。

キース:ビハインドし過ぎて、ほとんど表のビートになっていたりしてな。でも、ビートを後ろへ引っ張るやり方は気に入っている。一緒にプレイするドラマーにもよるけどな。でもドラマーによっては、いつまでやっても堂々巡りの場合もある。言葉で表現するのは難しいが、自分でやってみて感じるしかない。

ー初めにスティーヴ・ジョーダンをあなたに紹介したのは、チャーリー・ワッツでした。ワッツの冥福をお祈りします。ワッツとジョーダンのリズム感覚は、似ているような気がします。表現するのはものすごく難しいですが、ドラマーとしての共通点があるように思います。

キース:俺も初めにそう思った。スティーヴ・ジョーダンは、チャーリー・ワッツのドラムを聴いて育ち、彼を尊敬している。スティーヴの中には、ストーンズの一員としてプレーしていたチャーリー・ワッツのエッセンスが残っている。チャーリーのドラムは唯一無二で、彼ほどセンシティブなドラムを奏でる人間には出会ったことがない。でも時々、スティーヴのドラムを聴いていると、チャーリーがプレイしているのではないかと錯覚することがある。Winosでは、ストーンズを聴いて育った連中とプレイできて、彼らなりの解釈のストーンズ曲が聴けて楽しい。スティーヴと俺は、今ずっと一緒に作業を続けている。

ー作業というと、次のソロアルバムですか?

キース:色々さ。今は手探り状態だ。とにかく今はツアーを終えたばかりで、春になろうとしている時期だろう? 今年は何をやろうか、考えているところさ。そして今年はストーンズの60周年だ。間違いなく何か記念のイベントをやるだろう。今の時点では、今年どうなるかを言うのは早過ぎる。ムカつくコロナがまだいるしな。早く過ぎ去ってくれるのを願っているよ。今年は魅力的な音楽が生まれそうな気がする。

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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