flumpool 山村隆太が語る、ラブソングを歌う意味

flumpoolが見つけた「軸」とは?

―実際に古い歌を再録してみて何が一番変わったと思いますか?

1曲目の「君に届け」は当時からああいう青臭い、ストレートな王道ラブソングって歌詞を書いてても、当時でも気恥ずかしかった感じはあったんです。実際、「君に届け」があんまり好きじゃない時期もあったんですよね。俺らもっと難しいことできるぞじゃないですけど、そういう自己顕示欲みたいなのがあって。シンプルな曲っていうものにすごく魅力を感じないときがあったりしたんですけど、今はむしろ“これだよな”って(笑)。当時を否定するわけじゃないですけど、一周回っても根本にあるのってこういう感情なんですよね。これはコロナだから余計感じるのかもしれないですけど、人と人って、何歳になっても誰かを好きになることってすごく大きなエネルギーになるし。これはたぶん生きていく上でとっても大事な歌なんだろうなって、歌っててすごく感じましたね。当時よりこの曲を届けたいなって思ってるし。声が出なくなって、伝えることができなくなったことも経た自分がここに戻ってきて、やっぱこれだなって。そういう意味では、ここでまたあらためて、人が人を想うことの普遍性や、僕自身年齢を重ねて大人になっても、変わらない部分が発見できことが変わったところというか(笑)。それで1曲目に選びました。



―なるほど。

今世界の情勢が情勢なだけに、こういうラブソングが実はすごく大事だなって思います。僕台湾とかシンガポールとか香港とか、この10年間海外でライブをやらせてもらって、その場所に行って、食べるとか、街を知るとか、その土地の文化を知るとか、歴史を知るとかが国際交流というよりも、好きな音楽について一個話すが一番なんですよ。「俺ビートルズ好きなんだよね」って、「俺も好き」って、海外の人と音楽一つ共通するだけで、それ以上に平和になる方法って実は僕の中ではあんまり感じられなくて。ミュージシャンだからっていうのがあるのかもしれないですけど、でも音楽ってそういうものであって欲しいなと思うんですよ。

―ええ。

「君に届け」みたいな曲が、例えば台湾の人たちとか、世界の人たちに好きって言ってもらえることで、人と人の繋がり方がすごく大きな力になるんじゃないかなとこの10年で思っているんです。今回のアルバムは、ほぼラブソンが入ってるんです。それはコロナで、人と人の繋がりを自分の中で渇望していたという反動もあるんですけど、独立してより自分たちの根本にあるメッセージとか、歌いたいことを突き詰めたときに、やっぱりflumpoolってラブソングじゃないかなって、僕はすごく軸を見つけたなって思ったんですよね。で、それを変わらずにやってきたかって言われたら、いろんな曲を出してきたんです。ラブソングなんてやっぱり甘すぎるよっていう時期も実際あったんですけど、いろんな寄り道や遠回りを経て、ここだなってところを見つけられたなと思いましたね。

―確かに、ラブソングってチープに思えてしまう時期もありますよね。

あるんですよ! 僕も大学の頃はラブソングが大っ嫌いで。大学デビューしているヤツを見ると、お、ヤバっ!って(笑)。

―ブラック隆太が出てきましたね!

やめてください(笑)。当時はすごいカッコつけてたんでしょうね。女の子に走るとかってスゲーダサいみたいな。このバンドでもファンと付き合うとかは絶対あかんからなみたいなのを、メンバーに押し付けてた時期とかあって。今思うとマジカッコ悪いなと思います(笑)。そういう色眼鏡で、偏見で見ちゃう自分がけっこういるんです。で、そういうラブソングアンチみたいな時期ありますよね。しかもflumpoolって、ビジュアル重視とか、アイドルとか言われてた時期もあって。そこに対して馬鹿にされてるじゃないですけど、俺たちは音楽で認められていないことに対しての劣等感やコンプレックスがすごくあったんです。だからなおさらラブソングは、意地でも書きたくなかったし。でも求められているものに従順になったことも何度もあるので、そこに抗ってきたかっていうとそうじゃないんです。そんなに自分たちも強くなかったので。で、そういう葛藤の中でのラブソングなんですよね。ラブソングだけじゃないって思われたいけど、でも自分たちを受け入れてくれてるのは実際にはそういうキャッチーでポップな自分たちだと思うし。それが良い悪いじゃなくて、そこに常に葛藤があったのは、flumpoolの歴史の中ではけっこう大きいんですよね。でも、今回のアルバムでのキーポイントとしてラブソングをメインに書いたのは、吹っ切れたっていうことだと思ってます。

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