flumpool 山村隆太が語る、ラブソングを歌う意味

昔の「歌」と向き合うために

―なるほど。ありていに言うと、そこは、山村隆太のルックスがよすぎる問題もあると思うんです。やっぱ見た目がいいと、どうせこの人たちは見た目で売れてるんだろって言われちゃうのはしょうがないと思うんですけど……。

だから周りの人たちからは、ある種アドバンテージを持ってると思えばいいんじゃない?っていうのはすごく言われるし。うーん……何が悔しいかっていうと、そこに頼りそうになる自分がいることですよね。そこにすがりつこうとしているというか、評価されることって僕はすごく怖いことだなと思っていて。いいねを押したりとか、自己評価ではなく、他者の評価に身を預けてしまうのは、すごい危ういことだと思うんですよね。自分を認められないというか。そういう意味でも、その評価に振り回されてしまう自分がすごく嫌でしたね。「俺の音楽でいいことやってんだから」って言えたらいいんですけど、やっぱり20代は自分たちのやっていることに過信はできなかった自分たちがいたので。そこに対して「地に足つけて行こう」っていう、優等生な感じでしたから(笑)。実際は心の中ぐちゃぐちゃみたいなときもありました。けれどそれに対して、「俺はロックだ!」って言う勇気もないし。かと言って「ビジュアルで売っていきましょう」って言われたら、「いや、それは違います」っていう自分たちがいるし。ややこしいとこですよね(笑)。

―独立やコロナ禍を通して、今回のアルバムはコロナ禍という状況がそうさせたっていうのがあるかもしれないですが、ラブソングだけを集められたのは隆太さん自身も強くなったってことの証なのかなって思います。

そうですね。割り切ったところ、振り切れるっていうところは強さなのかもしれないです。これは昔のインタビューでも言ったんですけど、弱さを受け入れること、弱さを知ることっていうのは自分の強さだと思っているので。そういう意味ではバンドが独立して、不安な部分もあるし、寂しさもあるし。それでいて、ファンやスタッフのありがたみもすごく分かるし。だから、強くなったっていうよりも、自分たちにできる限界を知ったのはすごく感じてて。その上で背伸びした曲じゃなくて、単純に寂しいよね、不安だよね、だから人に好きって言えることってすごく安心するよねっていうことを、弱くなったからこそ言えるんじゃないかなと思っていて。そういう意味では、強くなったような(笑)、弱くなれてるような(笑)。なんかそういう気持ちもあります。

―隆太さんが突発性発声障害を公表したのは2017年だと思うんですが、今回のアルバムではそれより前の曲がピックアップされています。聴き比べてみたんですけど、アレンジもけっこう変わった「証」では特に声が太くなったような気がしたし、正直圧倒的に良かったんです。

「証」は僕もこれはいい歌録れたなって、自分でもめっちゃ聴いています(笑)。内心、“やった!”みたいな、手応えを感じている曲ではありますね。やっぱり、声が出るか出ないかで一喜一憂しているところがあるので。なんでアルバムの中でも「証」は良かったなって思っていたので、そこを気づいてもらえたのは嬉しいです。



―圧倒的に違うなって思いました。

嬉しい。嬉しいだけじゃちょっと(笑)。インタビューっぽいこと言わないと(笑)。

―(笑)。

僕の中で発声障害に対して、どういう向き合い方をするかっていうと、やっぱりあそこでゼロになったりマイナスからのスタートなったなって、すごくプラスに考えているんです。今でも昔のファンで、テレビで歌ったときに、「声変わっちゃったね」とか、「flumpoolのボーカル、昔と声も歌い方変わったね」とか、やっぱりあるんですよね。昔なら“あー、やっぱそうか”って落ち込んでしまう自分がいたんですけど、でもそうじゃなくて、じゃあその一人に対して、次にもう一回聴いてくれたときに、「でも、なんかいいね」って言わせるためにこれから生きていきたいなっていう気持ちがあるんです。そういう意味で、今回のアルバムの再録では曲の中身とかメッセージじゃなくて、声という僕の大事なアイデンティティでそういう向き合い方をしています。なんで、再録した全部の曲で昔と今を比べられるかもしれないし、前の方が良かったっていう人ももちろんいると思うんです。でも、僕としてそうじゃなくて、そういう風に生きてるということが大事なんです。昔よりもプラス1点積み上げていこうという加点方式の生き方でいきたいので、歌に関しては素直に嬉しくなれるんです。“あぁ、やった!”っていう(笑)。そういう気持ちになります。

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