ザ・リーサルウェポンズが異様さを大切にする理由、作家・爪 切男が聞く

都立家政で起きたチージーな奇跡

サイボーグジョー:先生はベリースマートビジネスマインドな人。でも、すごくアメリカサブカルチャーを知ってる。プロレスとか音楽とか映画とか、トゥゲザー80年代アクションムービーマインド! そこが同じだから、80年代、90年代の文化で先生のマインドをバッチリ理解できるね。

アイキッド:「これをチージー(ダサかっこいい)な感じでメル・ギブソンっぽくやってくれ」とか、「利き目と利き手が違うブルース・ウィリスのような変則的な姿勢で」っていうのを、片言で伝えてもすぐにわかってくれたんです。そのへんの価値観の共有は日本人同士でもなかなかできない。言えるこっちもすごいし、ついてこれるジョーもすごい。そんな二人が同じ町で出会ったのも、そこが都立家政という町だったのも含めてなかなかの奇跡なんじゃないかなと(笑)

―都立家政っていうのが、また最高で(笑)。

サイボーグジョー:でも空き地も多いよ。

アイキッド:肩の力が抜けた町というか、何も生まれなさそうな町ですけどね。高円寺に行って一旗揚げようとか思えない人が最終的に送り込まれる家賃が一番安い町、それが都立家政(笑)。

―愛着があるからこそのお言葉と受け取ります(笑)。さて、そんなザ・リーサルウェポンズですが、今年二月にアルバム『アイキッドとサイボーグジョー』を発売し、全国ツアーも開催。アルバム収録曲の「さよならロックスター」は、ビルボードheetseekers3週連続ランクインと絶好調です。

サイボーグジョー:アリガトウゴザイマス!

―現在160万回以上再生されているこの曲のMVをはじめ、とにかく映像にも力を入れている印象が強いです。

アイキッド:これだけ動画全盛の時代にMVを作らないのは、聴いてもらえる機会の損失ですからね。MVがあるかないかで曲の売上は変わりますし、このバンドで一番の担保になっているのは曲なんです。なので、金はかけなくてもいいから曲を活かすための付属品ぐらいの感覚でMVは絶対に作らなきゃと。あとは映像化しないとわからない歌詞がいっぱいあるので(笑)。



―(笑)。英語と日本語が入り混じった独特の歌詞が毎回たまらないです!

アイキッド:英語と日本語のクレオール語というか、八丈島や青ヶ島の島言葉のような英語と日本語の英語を崩した感じのめちゃくちゃな言葉みたいなものは前のバンドでも使っていましたけど、ここまではっきりとサラダボウルさせちゃったのはアメリカ人のジョーがボーカルだからですね。

ー日本語の発音にも並々ならぬこだわりを感じます。

アイキッド:「飲み物」は「ナミモノ」って言ってくれという具合に、細かく指定しますね。日本語が上手すぎるとそれはそれで面白くないので。

ーキャッチーなメロディに加え、ときに皮肉も加えた歌詞も素晴らしいので、学校の英語の授業では、ビートルズよりもお二人の曲をリスニングの教材にしたらいいんじゃないかと個人的に思ってるんですけど……。

アイキッド:使っている英語が全部デタラメなんで(笑)。正直、英語なんて誰も聴いてないだろと思っています。ジョーの発音がいいから本格的な英語だとか言われるんですけど、文法なんて全部間違ってますからね。

サイボーグジョー:まあ、文法はちょっと変だけど歌ってて楽しいね。アメリカ人が変なジャパニーズ英語を歌うのおもしろいんじゃない? って。

ー音楽に正しい文法を持ち込むのはナンセンスってことで(笑)。そして、ちょうど今日の午前中に新しいMVを撮影したとのことですが。

アイキッド:私が監督をやっているんですけど、今回はハリウッドザコシショウさんに「さよならロックスター」のニューバージョンのMVに出演していただきました! これから編集に入るんですが手応えはあります! いつも通りのハリウッドザコシショウさんと我々の曲が見事にシンクロしております!



Rolling Stone Japan 編集部

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