アーロ・パークス、グラミー賞ノミネートの実力派新人が語る「セルフラブ」

アーロ・パークス(Photo by Serena Brown for Rolling Stone)

4月4日(日本時間)に開催される第64回グラミー賞授賞式で、最優秀新人賞と最優秀オルタナティブミュージックアルバム賞にノミネートされているアーロ・パークス。デビューアルバム『Collapsed in Sunbeams』で昨年のマーキュリープライズを受賞、この夏にはフジロックにも出演決定。進境著しいロンドンのシンガーが多くの共感を集める理由とは?


現在21歳、詩人にしてシンガーのアーロン・パークスは10代で音楽活動を始め、卒業試験の合間を縫ってブログ向けのインタビューをこなした。ナイジェリア人の父とフランス系チャド人の母との間に生まれ、ロンドンで育った本名アナイス・オルワトイン・エステル・マリノが、好評を博した2枚のEP「Super Sad Generation」「Sophie」をリリースしたのは2019年のことだった。新型コロナウイルスのパンデミック直前に初のツアーを予定していたが、代わりに我々と同じく、自宅にこもってこの悪夢をやり過ごした。「自分を見つめ直す時間ができた。自分と向き合うようになったわ」と本人は言う。

パークスはこの時期を利用して、デビューアルバム『Collapsed in Sunbeams』を完成させた。昨年1月にリリースされた贅沢で開放的な作品の中心には、たゆまぬ脆弱性がある。「過去の辛い出来事と折り合いをつけるというアイデアをとことん掘り下げてみたかった――そして楽しい思い出を称え、私を私らしくさせてくれた物語に敬意を示したかった」とパークスは言う。「昔書いた日記やポエムのフォルダを全部引っ張り出して、それを出発点にして作業した」



アルバム全編を通して、パークスはゆるぎない誠実さで共感を得てみせた。彼女が語る小さな物語が描きだすのは、誰もが思い当たる苦悩だ。「Hope」ではミリーという主人公が登場し、「喜びを再びよみがえらせようと説得する」姿を、パークスは優しく歌い上げる。憂鬱との葛藤を歌ったアンセムソングには、思いやりと気遣いがこめられている。「自分で思うほど、あなたは一人じゃない」というコーラスが続く。歌詞にこだわって、愛や後悔、痛みをテーマにした彼女の楽曲は、胸に刻み込まれた思い出のごとくはらはらと舞う。

「最初に作曲を始めたころは逃避や空想の世界が中心だった。やがて年を重ねると、胸の奥をのぞく手段になった。自分の気持ちを歌にしていただけだったの」と彼女は説明する。「それから周りの人たちの物語を語るようになって、バランスが取れるようになった。今は学生のように、主観的なレンズを通して物事を見ている」

Translated by Akiko Kato

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