ウェット・レッグ、2022年最注目バンドが語る「ルーズな軽やかさ」の秘密

左からへスター・チャンバース、リアン・ティーズデイル。2021年12月、ニューヨーク州ブルックリンのユニオン・プールにて。(Photo by Griffin Lotz for Rolling Stone)

 
イギリス・ワイト島出身のデュオ、ウェット・レッグ(Wet Leg)は、すでに海外では誰もが口ずさむほどの人気だ。性的な暗示とウィットに富む歌詞が光るポストパンク風の名曲の数々。デビューアルバム『Wet Leg』を発表した2人にアメリカでインタビュー。

リアン・ティーズデイルとへスター・チャンバースは、自分たちのことを重く受け止めるタイプではない。「ウェット・レッグ」というバンド名でさえ、パソコンのキーボードで適当な絵文字を組み合わせているうちに思いついたものだ。「バンド名探しにはうってつけの方法」と、27歳のチャンバースは太鼓判を押す。

時は2021年12月初頭で、ティーズデイルとチャンバースはNYのエースホテル ブルックリンのロビーの椅子に腰掛けている。ロビーの写真ブースでおどけたフォトセッションを終えたばかりだ。イングランド南岸に浮かぶワイト島出身のティーズデイルとチャンバースにとっては初めてのニューヨークで、『セックス・アンド・ザ・シティ』でしか目にしたことがない大都会での体験は、いまのところ彼女らの期待を超えていた。「とにかく、街中を闊歩したいな」と28歳のティーズデイルは言う。「映画の登場人物みたいにね」

ダイナーで出されるボリューム満点の朝食(「かなり強烈だった」とティーズデイルはコメント)から、ニューヨーカーにとっては迷惑極まりない、クリスマス前の恒例イベント・サンタコン(「本物が見たい!」とチャンバースは言った)に至るまで、ふたりは大都会が見せる多彩な顔に衝撃を受けた。だがそれよりも彼女らは、突如として手にした成功を未だに噛みしめきれずにいた。筆者と落ち合うと、ふたりは米トーク番組「レイト・ナイト・ウィズ・セス・マイヤーズ」に初めて出演した時のことを話してくれた。「なんだか自分じゃないみたい」とティーズデイルは言う。「だってヘアスタイルもあんなに素敵だし」


「The Late Late Show with James Corden」でのパフォーマンス映像

アイロニーをたたえたウェット・レッグのイギリスらしい魅力とは、正にこのことだろう。ウェット・レッグは、イギー・ポップ、デイヴ・グロール、俳優のマイケル・ガンドルフィーニをはじめ、あらゆる人々から注目を集めている。滴り落ちるようなポストパンク風のリフとウィットに富んだきわどい歌詞が印象的な「Chaise Longue」や「Wet Dream」といったシングルによって、ふたりはまったくの無名バンドからたった数週間でもっとも期待される新人アーティストとなった。驚いているのはあなただけではない。当の本人たちも同じくらい戸惑っているのだ。

2020年11月にドミノ・レコーズと契約を交わしたことを指摘すると、ふたりは独特のコミュニケーション方法で次のように語った。「でもライブをする機会がなかったから、自分たちを披露することができなかった。すごく変な感じだった」とチャンバースは言う。「いつも不安だった。本当はギターが弾けないって思われたらどうしようって。もしかしたら『すみません、契約は……』」

「……なかったことにしましょう」とティーズデイルが口を挟み、一枚の紙を破るしぐさをした。するとふたりは大声で笑い出した。チャンバースは、指輪だらけの指で三つ編みをもてあそんだ。



ブルックリンのライブハウス、ベイビーズ・オールライトで先日行われたライブでは、歌詞をそらんじたファンたちが「Chaise Longue」を大合唱した。この曲は、2019年のクリスマス休暇中に帰省先で書かれたものだ。チャンバースは夕飯の支度をしていて、ティーズデイルはクッキーを食べていた。自由気ままに学園コメディ映画『ミーン・ガールズ』の名言(「誰かにマフィンにバターを塗ってもらう?」という、実際にはかなりきわどい意味のセリフなど)を言い合ううちに“Excuse me”と“What?”という「Chaise Longue」の掛け合いが生まれた。

ティーズデイルとチャンバースがカントリー調の白いロングワンピースに麦わら帽子という装いで登場する「Chaise Longue」ミュージックビデオのYouTubeの視聴回数は300万回を超える。「意識的に何かを書く、という努力をしたわけではない」とティーズデイル語る。「お泊まり会に来た13歳の少女の頭の中から生まれたものなの」

ウェット・レッグがここまで来ることができたのは、ティーズデイルが言う「13歳の少女の頭の中」と、すべての物事に対するクールで無関心なアティテュードのおかげだ。「ここまで気楽でリラックスしているように振る舞うのも、結構大変なの」と笑顔を浮かべながら彼女は言う。まるでウェット・レッグの歌詞に出てきそうな皮肉な言い回しだ。

Translated by Shoko Natori

 
 
 
 

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