レッド・ホット・チリ・ペッパーズの人間性に迫った、2000年の秘蔵インタビュー

フリーと娘のクララ

フリーは例のピエロ・カーを、自宅前のドライブウェイに停めた。車には学校まで迎えに行っていた娘のクララも乗っている。まだあどけなさの残る彼女は、赤のロングヘアーとベルボトムという服装だ。彼女は家に駆け込むと、リビングにあったDVDの山を見つけた。「パパ、今夜は映画を観てもいい?」と彼女は訊く。

「宿題はないのか?」。フリーが訊き返す。短いやり取りの結果、クララが抱えている宿題は長期的なプロジェクトであることがわかった。「じゃあ1時間だけスピーチの準備をすること。そしたら映画を観ていいよ」とフリーは言った。すぐ近所に住んでいる元妻との関係は友好的で、2人は共同でクララの面倒を見ることで同意している。

広々としたフリーの家は、壁の大半に暗めの木材が使用されている。彼はそのハンティング用のロッジのような雰囲気を気に入っている。「いい暮らしをできるようになってから随分経つけど」と彼は話す。「それを当たり前だと考えたことはないんだ。時々壁に手を当てて、こんなふうに口にしてる。『これは俺のものだ。誰にも奪われたりはしない』」

「私の部屋を見る?」。利発で落ち着きのあるクララはそう問いかける。フリーのヒーローであるマイルス・デイヴィスとビリー・ホリデイの写真が飾ってある廊下を通って、彼女は自室に案内してくれた。白い壁に囲まれた大きな部屋で、外にあるプールへと続くドアがある。部屋はブリンク182やクリスティーナ・アギレラ、そしてリンプ・ビズキットのフレッド・ダーストの写真でデコレーションされていた。

続いてパパの部屋を見せてくれた彼女は、リモートコントロールの暖炉が羨ましくて仕方ないという。「パパは甘やかされてるの」と、彼女は親しみを込めて話す。

キッチンに戻ると、フリーがディナーの準備をしてくれていた。今夜のメニューはターキーサンドイッチと、蒸したアスパラガスとブロッコリーだ。今日の彼は鈍い橙色のセーター、黒のエナメルパンツ、そして派手な青と黄色のアディダスのスニーカーという服装だ。料理はよくする方だが、下手の横好きだと彼は話す。

「ねぇパパ、これ食べていい?」。そう話すクララはチキンライスの箱を手に持っている。フリーは原材料の項目を厳しくチェックし、化学調味料が多く使用されていることを確認したものの、茹で野菜を追加で食べることを条件に許可した。

オーストラリアで生まれたフリーは、4歳の時に家族と一緒にアメリカに移り住んだ。彼は最近米国の市民権を取得したが、余生はオーストラリアで過ごすつもりだという。自分をアメリカ人かそれともオーストラリア人とみなしているかと訊くと、彼はこう言った。「どっちでもないよ。俺はHollywoodianさ」

フリーがベースを弾くようになったのは17歳の時だが、最初に手にした楽器はトランペットだった。「ディジー・ガレスピーが好きだった。当時はロックのことなんて何も知らなかったんだ。昔使ってたノートの表紙にスティクスとデヴィッド・ボウイの絵を描いたけど、彼らが何者なのかは知らなかった。練習し始める前から、俺はどんなギタリストにも見劣りしないベースプレイヤーになると決めてた。跳ね回ったり、クレイジーなことをやるっていうのも含めてね」。彼は代名詞である超高速のフィンガーピッキングで無数の賞を獲得してきたが、そのプレースタイルを完全に確立した今は、よりメロディを重視したアプローチを追求している。

我々が話している間、3匹の猫(Peppy、Angel、Froggy)と2匹の犬(アザラシのような見た目のMartianと、ひと回り小さいLaker)がキッチンをうろうろしていた。全部自分が名付けたんだというクララの発言に対し、フリーはLakerの名付け親は自分だと主張した。「違うよ、パパはAnklesっていう名前にしようとしてたもん」と彼女は話す。

ディナーの用意ができた。チキンライスは予想以上に水分が多く、フリーはそういう食べ物なのだと理解していたが、クララの言う通りに加熱して水分を飛ばそうとしていた。彼女はアーチー・コミックの本を読みながら食べ始め、フリーは頭を下げて祈りを捧げていた。「俺のことは気にせず食べ始めてくれていいよ」と彼は言う。「みんなそうするから」

Translated by Masaaki Yoshida

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