マイク・シノダが語る NFTとAIを使って追求する、新しい時代の音楽とアート

NFTと音楽の画期的なクロスオーバー

ーNFTの持つコミュニティの面に興味を持ったわけですね。クリエイティブの制作において、コミュニティの中にいるみんなと共同で制作できるような可能性に未来を感じたわけですね。

マイク 間違いないね。今僕が関わっているプロジェクトにWVRPSというのがあるんだけど、これはWarpSoundという会社が手がけていて、NFTプロジェクトの名前がWVRPSっていうんだ。WarpSoundはAIの音楽の会社で。彼らはAIで音楽を作るアプリケーションを作っていて、AIのセレクションに基づいて、すぐに音楽を生成させることができるんだ。今までのAIがやっていたことは二つに分かれていて。一つのカテゴリーは、人間が作った音をループして、そのループをストックしておくというもの。実際に音楽を作っているのは人間で、AIがやることは異なるループを組み込むことなんだ。もう一つの新しいカテゴリーは、AIが波形を分析して、新たな波形を作るというものだ。WVRPSがやろうとしているのは、その二つのやり方の中間になる。AIがやることは、人間が作った音のループをストックするだけじゃなくて、個々のサウンドを組み込むこともやる。個々のドラムのキック、スネア、ハイハット、ベース、ギターといったいろいろな音のアイテムを組み込んで、AIがBPMを選んで、音符を選んで、コード進行を選ぶんだ。それが終わると、新しいキャラクターが作られるんだ。それぞれのキャラクターには個性があって、例えば、Nayomiという名前のキャラクターはローファイなビートを得意とするスタイルで、DJ Dragoonという名前のキャラクターはアグレッシブなEDM、トラップを得意とする。WVRPSはBored Ape Yacht ClubのNFTを購入したんだけど、NFTを1個購入してそのNFTのオーナーになると、商業上の権利も付いてくるんだ。Bored Apeが作ったNFTをWVRPSが権利ごと購入したわけだから、WVRPSはそのNFTを使って何でも好きなことができる。WVRPSはそこからGLiTCHというキャラクターを作って、GLiTCHにも独自の音楽のスタイルを持たせたんだ。WVRPSではどのキャラクターも音楽をいつでも好きなだけたくさん作ってリリースすることが可能となっただけでなく、Twitchのチャンネルを持ってて、スクリーン上にキャラクターを登場させている。しかも、それを管理しているのはAIであって、人間は関わっていないんだ。そこでキャラクターはDJをやって、ファンはどのキャラクラーが良かったのかという投票をやる。ファンはそこで、「もっとビートを速くした方がいい」とか、「このパートは好きだけど、このパートは良くない」とか、「このベースラインはひどい」とか、AIに言いたいことを何でも言えるんだ。AIはそれにすぐに応えて、音楽を変えていくんだよ。あと、WVRPSにはさらにクレイジーなことがあるんだ。WVRPSのNFTを購入すると、その音楽の所有権も付いてくるんだ。つまりWVRPSのNFTを購入したら、そのホルダーはその音楽にラップを乗せたりして新たに曲を作ることもできるんだ。しかもその曲をSpotifyとかで配信もできるし、そこから得られるロイヤリティも100%受け取ることができる。そのロイヤリティはWVRPS側は1%も取らないんだよ。

ーそれはかなり画期的なことですね!

マイク NFTを詐欺だと言ってる人が多いけど、こういうプロジェクトのことは何一つ知らないんだよね。スゴく革新的だし、ちょっと複雑だからね。音楽制作のことがわからない人とか、ロイヤリティがどう支払われるのかがわからない人たちにとっては、理解するのは難しいと思うんだ。だけどアーティストがこのプロジェクトのことを知ったら、「オーマイゴッド! 何てクリエイティブなんだ。全く新しいものだね!」って驚くはずだよ。僕にとっても全く新しいツールセットだし、新たな実験の場となっているからね。

ーめちゃくちゃ面白いことをやっていますね。

マイク ありがとう!

ーZIGGURATSのことも聞きたいのですが、オリジナルの楽曲4曲と5000個のNFTを販売しましたよね。楽曲の方はストリーミング・サービスで配信もしています。これはどういうアイデアを考えたのですか?

マイク 今のNFTのトレンドとして、1万個のNFTを販売することが多いよね。CryptoPunks、Bored Ape Yacht Club、Cool Cats、DeadFellaz、DoodlesといったNFTはどれも1万個を販売している。だけど、5000個販売することも多くて、僕も5000個を販売してみたんだ。NFTっていうは、元のアートが持ついくつもあるレイヤーを組み合わせて、1個1個が作られている。それぞれのレイヤーっていうのは、背景、頭と肩、目、口とかいろいろあるんだけど、僕はそこに音楽が入ったら面白いんじゃないかって思ったんだよ。それぞれのレイヤーをドラム、パーカッション、ベース、キーボードとかにして。僕がZIGGURATSでやりたかったのはそういうことなんだ。それでさらに僕が考えたアイデアはミックステープなんだよ。今の時代、ミックステープっていうのは、アルバムのクオリティに達していないような音源を意味するんだけど(笑)。だけど僕が育った時代は、ミックステープは全然違うものだった。カセットテープだったし、DJがいろんなラッパーたちを集めて、彼らにエクスクルーシブの新曲を渡したり、他からビートを引っ張ってきて、そこにラップを乗せたりして、それをマッシュアップして、ミックスして、ノンストップで聴けるものにしていたんだ。僕が考えたのは、そのミックステープの未来型、Web3.0時代のNFTバージョンのミックステープなんだ。ただ、尺はかなり短くしている。今の時代、僕たちが集中できる時間は短くなったし、TikTok世代が聴きたいのは1~2分の曲だからね。だから僕が作ったミックステープは約7分間とスゴく短いものになっている。5000個のNFTはどのNFTにも唯一無二のユニークな曲とアートが入っているよ。このNFTを購入すると、ポケモンカードのパックと同じで、中に何が入っているのかがわからない。それが最初のステップで、1個15 Tezos(仮想通貨:3月11日時点で1 Tezos=約350円)でNFTを販売したんだ。それで、このNFTを自由に交換したり、好きな価格で売ったりしてもいいということにした。今は大体が平均で30 Tezosぐらいになっているんじゃないかな。多くのNFTと同じで、一時期価格が高騰した後に、価格が下がって今の状態に落ち着いている感じだね。

ーZIGGURATSのDiscordも見たんですけど、みんなコミュニティ内でけっこう楽しくやっていますね。

マイク そうだね。ファンはSNSのプロフィールのアイコンにも使ってくれてるよ。おなじみのNFTもあれば、超レアなNFTもあるんだ。超レアなNFTはレイヤーで作られたものではなく、手描きの一点モノのアートなんだ。超レアなNFTには15000 Tezosの価格が付いているものもあるよ。


昨年12月2日に発表されたZIGGURATS(ジッグラツ)。5000個のアート+新曲のNFTコレクションで、ブロックチェーンのTezosで展開。初のジェネレーティブNFT(特定の条件下に自動作成され販売されるNFT)のミックステープとなった。翌12月3日には既存のストリーミング・サービスで4曲入りの音源『ZIGGURATS』として配信もしている。

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