SNARE COVERが語る音楽生活20年の歩み、井手上漠の人生をテーマに書いた新曲

ーバンド時代のSNARE COVERを振り返ると、どんな時間でした?

正直なことを言うと、苦しかったです。これは絶対に変えなければいけないと思っていても、都合よくメンバーの意見を聞いたり、都合よく聞かなかったりもして。メンバーがいることによって甘えていた部分がありました。あとはソングライターなので、自分の作り上げる曲でメンバーは左右されるから、そういう意味でも責任が重くのしかかっていて。

ーそれで苦しかったと。

楽しかったことも、かけがえのない瞬間もたくさんあります。だけど振り返ったら、辛かったことの方が多かったですかね。

ーソロになってもSNARE COVERの看板を下ろさなかったのは、どうしてなんですか?

ずっと音楽家としての名前を持ち続けるのも良いなっていうのが漠然とあって。あとはコーネリアスさんのように、個人名じゃなくて1つのプロジェクトとして名乗るのが良いな、と思いました。そもそも斎藤洸で活動することにしっくりしない感じもありましたし、SNARE COVERの名前を保っている方が背筋が伸びる気がしたんです。



ーソロになって間もなく、大きな転機が訪れましたよね。2017年のエマージェンザジャパン⼤会優勝、ドイツで開催された世界⼤会4位入賞に加え、2019年には『メイドインアビス』の映画版『劇場版総集編【前編】メイドインアビス 旅立ちの夜明け』の劇伴も務めました。これによって周りの見る目は変わりました?

認知度は大きく変わりましたね。ただ、一般にドーンと広がったわけではないんですよね。エマージェンザに関しては、すごく特殊な大会なのでマニアックでニッチなことではあって。アニメに関しても、かなりグロテスクな描写もありますし、割と特殊な作品なのでこれによって一気に色んな方に知られるようになったというよりは、絶対に届くはずがなかった人に知られるきっかけになったと思いますね。

ードイツから帰国後、「自分にしか出来ないことは何かを真剣に考えなければダメだなと痛感した」と言ってましたよね。

ドイツの世界大会では全て日本語詞で歌ったんですよね。それを海外の方にも受け入れてもらった瞬間があって。「言語に関係なく、人は音楽に感動できるんだな」と知ったので、せっかく貴重な経験をして、ベストシンガー賞もいただけて歌を認めてもらったからこそ、自分の可能性を限界まで確かめなきゃいけない、と思いましたね。

ー2019年にはソロになって初の作品「Birth」をリリースしました。こちらはどういう思いで作られたんですか。

僕はいつもテーマを固める前に楽曲を作り始める。なので曲自体が自分の書きたい音楽へ導いてくれる感覚なんですね。作曲をしてみて、初めて自分の書きたい思いを注入できる。それが強く生まれたのが「Birth」だったんです。誘われるように曲を構成していった記憶がありました。意識的にというよりも、自然と楽曲が生まれましたね。

ー「Birth」を聴いて声が綺麗に伸びる感じというか、伸びを自在に操る印象がありまして。もしかしたら、幼少期の詩吟が生きてるのかなと思いました。

それはよく言われますね。自分の中ではクリス・ブラウンみたいな黒人のフェイクに影響を受けていると思い込んでいても、受け取る側には「和のメロディっぽいよね」と言われることが多くて。言われてみて、自分もそうかもしれないと思うことがあって。もしかしたら幼少の頃に習っていた詩吟の影響があるのかもなと。

Rolling Stone Japan 編集部

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