糸 / 中島みゆき
ローリング / 中島みゆき
田家:少なくともみゆきさんのコンサート史上最も劇的な繋がりの2曲ではないかと。
瀬尾:そうですかね(笑)。こんなことができるのも彼女らしいと思います。だって歌い方自体が変わるじゃないですか。先週も言いましたけど、女歌から男歌になる。そのへんの持っていき方も彼女ならではで、こういうことができるのも僕は楽しいんですけどね。
田家:この2曲がメドレーになったからそれぞれの歌い方にも違うものが備わったということもあるでしょうしね。
瀬尾:そうですね。だからそれができちゃうんですよね。
田家:これを聴いた人が編集なのではないかと言ったという、繋がり方は島村さんにすべてがかかっているわけでしょ?
瀬尾:すべてはかかっていますけど、気分で出ているのではなくて、出るところは決まっているんです。それ以上になると、隙間が空いちゃうので(笑)。だから隙間が空かないように、「ちゃんとこのタイミングで出るんだよ、島ちゃん」というふうになっているんです。
田家:それは全員のミュージシャンの頭の中に?
瀬尾:入っています。
田家:すごいなー。瀬尾さんはそれをPAのところでお聴きになっていて、ご自分で感動される瞬間もありますか?
瀬尾:それはごめんなさい、自分で感動はしないですね。やっぱり身内なので、どちらかと言うとチェックする側なので客にはなれないんです。お客さんと同様に「わー!」とか、「すげー!」というふうにはなれないんですよ。さっきの話だったら、「島ちゃん出るんだよーここ!」とかって思いながら、「違う!!」ってことにならないように祈っている方なので。信用しているので全然大丈夫なんですけども。
田家:感動する僕らの方が幸せかもしれない(笑)。
瀬尾:お客で観てみたいですけど、一度もないです(笑)。
田家:何度聴いてもこの2曲は胸が熱くなります。先週瀬尾さんがコンサートツアーは大変だから、いつかそういう時期が来るだろうとおっしゃっていましたが、そのへんをもう少しお訊きしていきたいんですけども。
瀬尾:深堀りします(笑)?
田家:今回のツアーは60何名が中心のスタッフですよね。
瀬尾:そうですね。人数は多いです。ミュージシャン、PA関係、照明関係、舞台セット美術の方、いろいろ含めるとそのくらいになっちゃいますね。
田家:ただ、メインのステージ関係は「夜会」と同じ方々という。
瀬尾:ほとんど一緒です。こちらも意思の疎通がしやすいので、新しい人だとその人の性格だったり、その人を調べるのに時間がかかる。僕的にこの人にはどういうふうに言えばいいのかなとか、扱い方みたいなのがあるんですけれども。みんなずっと一緒にやっている人たちなので、そのへんはツーカーでできるのが楽でありがたいことです。
田家:そうやって大勢の方とまちからまちへ、コンサート会場からコンサート会場へ旅をしながら、冒頭でおっしゃった音源のチェックは毎日おやりになるわけでしょ?
瀬尾:そうですね。毎日最低リハーサルは1時間やります。
田家:終わってからまたその日のものを?
瀬尾:それはまた別で注意事項は次の日にやります。自分は聴いて。
田家:それはホテルでおやりになるんですか?
瀬尾:そうですね。帰ってからやっていますね。だから、ほとんどツアーの間は僕の頭の中でずっと音が鳴っています。
田家:若いバンドやアーティストのツアー、今のベテランの人たちも若いときはそうだったかもしれないですけど、コンサート終わったら「さあ飲みに行くぞ!」みたいな日々はもはやないんでしょうね。
瀬尾:そっちの方が疲れますよね、もう。言い方悪いけど、コンサートが終わった後になんでミュージシャンやスタッフのご機嫌とらなきゃいけないのって思っちゃう(笑)。終わったら、僕はすぐに録音したやつを持ってホテルに帰ります。
田家:1人で音を聴いて。
瀬尾:あーだこーだと、また自分の中でチェック項目を全部書いておいて。
田家:ツアーに同行されるようになったのって最初からじゃないですよね。
瀬尾:じゃないですね。同行するようになったのは吉田拓郎さんが悪いんです。吉田拓郎さんが何年か忘れたんですけど、TAKURO&his BIG GROUP with SEOをやって。
田家:2003年ですね。
瀬尾:全く知らない間にポスターに刷られちゃったんですよ。中島さんのレコーディングでロサンゼルスにいたときに、中島さんのマネージャーが「こんなの出てますよ」って持ってきて、「瀬尾さんこれ全部行くんですか?」ってなって、「は?」って話になって。聞いてないし、ロスにいてめんどくさいから帰ってから話をしようって思っても決まっていることなので。それを知った中島さんが、「あ、拓郎さんには着いていくんだ」ってポツッと言って(笑)。
田家:そうか! みゆきさんの中でも瀬尾さんはツアーには来てくれないと思っていたんだ。
瀬尾:そうです。今まで行ったとしても、ツボのところだけチェックしに行くとか、お忍びで行ってみんなには会わないで終わった後に楽屋に行って、「あんた何点」とか言ったり、「よくできました」ってハンコをつけたりとか、そういうのをいろいろやっていたときがあったんですけど(笑)、毎回はついていってなかった。拓郎さんと回った後に、中島さんの方からちょっとつねられるような感じになりまして、「もしご希望なら行きますけれども」ってなって、それから行くようになったんです。
田家:瀬尾さんがちゃんとついてなかったら、今回のライヴアルバムはなかったということですもんね。
瀬尾:まあ、そういうことは誰も考えないですからね。
田家:このツアーは「糸」、「ローリング」で雰囲気が変わるわけですが、この後に“おたよりコーナー”というのがありまして、今まで一回のコンサートで1ヶ所だったものが次の曲を挟んで上手と下手に分かれて行われるようになりました。7曲目「流星」。