中島みゆきの救いと愛、ラスト・ツアーを瀬尾一三と語る

離郷の歌 / 中島みゆき

田家:優雅な始まりですねー。

瀬尾:オリジナルのイントロがちょっと短いので、幕が下りていたところを開く感じを出したくてコンサート用に作りました。弦楽器だけの隠れイントロみたいなものを作って、それで本当のイントロに入る形になっています。

田家:一幕目の1曲目が「一期一会」で対になっているところがある感じもありますけども、一幕と二幕の始まりという。

瀬尾:ここから二幕が始まる、ちょっとあらたまった感じ。

田家:あっけらかんとまでは言わないですけども、“天任せの終わり方”とどこか別の世界に行っている感じがありますもんね。ライヴ盤でもとてもふさわしい1曲目であります。一幕もそうだったのですが、二幕もメドレーというのが絶妙な組み合わせです。「離郷の歌」の後に「この世に二人だけ」「ナイトキャップ・スペシャル」「宙船(そらふね)」という。1983年のアルバム『予感』、2003年のアルバム『恋文』、2006年のアルバム『ララバイSINGER』。こんなに時間が空いている曲がそれぞれの曲に発売年は関係ない。

瀬尾:もう全く関係なく。

田家:これをアレンジしたときに意図したことはどんなことだったんですか?

瀬尾:他の曲もそうなんですけれども、繋げるときにいかにスムーズにというのが僕の腕の見せどころなので。スムーズ感で世界観がカッと変わるというのを考えさせられるので、僕はこういうのはすごく好きな仕事ですね。

田家:オリジナルの曲のスタイルは全然違う3曲でしょ。どう統一感を持たせるかみたいなことは?

瀬尾:統一感というよりか、僕はあくまで彼女が作った作品に沿ったサウンドをつけているので、あくまで統一感を作るのはご本人の歌であって。僕は彼女が表現しやすい状況を作ろうとしているだけのことなので、彼女の力量、歌い手の力量でしかない。

田家:例えば、「3曲こう繋げたいんです」というお話が来たときに、長さをどうしようとか、どこをカットしようかみたいなことも考えながら?

瀬尾:「ここはカットしておいた方がいいかな」とか、そういう話はしながらやっています。

田家:3曲ともそういう意味では人間関係の歌ですもんね。思うようにならない人間関係とか、女友だちに対しての歌であったり、性別を超えて檄を飛ばす歌だったり。

瀬尾:始めの「この世に二人だけ」の歌は男女の歌で、報われない恋というか。「ナイトキャップ・スペシャル」は女性同士の友情を歌っている、さみしいんだったら私がいるよというのと。「宙船」は全人類に対して喧嘩を売っているやつなので(笑)。喧嘩は売ってないか(笑)。

田家:励ましている(笑)。

瀬尾:励ましているやつなので、「あんたの生き方は自分で決めな!」って言っているもので、「人に決められるものじゃないよ」って言っている曲です。

田家:1つの人間讃歌と思って聴いていただけたらと思いますね。「この世に二人だけ」「ナイトキャップ・スペシャル」「宙船(そらふね)」です。

Rolling Stone Japan 編集部

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