人喰いモンスター「ハギーワギー」に保護者は騒然、米英で通報相次ぐ

インターネットの都市伝説

ハギーワギーの動画がインターネット上で子どもを食い物にしているといるモラルパニックは、一見すると「モモチャレンジ」に酷似している。日本の不気味な幽霊がよからぬ連中によって子ども向け動画に加工され、子どもに自傷行為を促すというデマは、2019年に拡散した。ハギーワギー同様モモチャレンジも、動画を子どもに見せないようにと保護者に警告する警察の投稿から始まって、その後地元メディアに拡散した。だが、実際にそうした動画がYouTubeに存在した証拠はなかった。懐疑主義的研究のための委員会(CSI)の研究員で民俗学者のベンジャミン・ラドフォード氏も、ハギーワギー現象は「子どもがらみの他のモラルパニックの特徴をすべて備えています」と言う。「現代の子どもたちはインターネットで何をしているだろうか、という考えです。隠れた危険に対する懸念はつねに存在します」

モモチャレンジと同じように、ハギーワギーをめぐるパニックの原因も「クリーピーパスタやそれに類似するインターネット現象のフィードバックループ」だと思われる。こう語るのは、データに基づいてインターネットの偽情報を研究する団体Logicallyのジョー・オンドラック捜査主任だ(シェフィールド・ハラム大学で、オンライン・ホラーフィクション研究の博士号取得の候補にも名前が挙がっている)。オンドラック氏の説明によれば、クリーピーパスタとはweb2.0やソーシャルメディアで使われるオンライン・ホラーフィクション用語で、「現実とフィクションの間をさまよい」、情報元があやしい1人称で語られる話を介して広まるものを指す(ハギーワギーが大々的に取り沙汰される発端となったイギリスの心配性の母親によるFacebookの投稿がまさにその一例)。

「世間はそれをきっかけに、いたいけな幼い子どもを蝕む悪質なキャラクターがYouTube Kidsに存在する、という考えを額面通りに受け止めてしまったんですね」とオンドラック氏。「そうした考えは必ずしもオンラインカルチャーに精通していない人々や、YouTubeのアルゴリズムに詳しくない人々を通じて、瞬く間に広がっていきます」

もちろんモラルパニックをめぐる多くの都市伝説のように、アルゴリズムの不具合と保護者の監視の欠如が重なれば、子どもたちがうっかり悪質なコンテンツに出くわす可能性があるのも事実だ。2017年にMediumで拡散した作家ジェームズ・ブリドル氏の投稿では、ペッパピッグやミッキー・マウス、ドナルドダックといったキャラクターを利用した子ども向けの低俗かつ悪質な動画が、アルゴリズムによっておすすめされるという「奇妙な子ども向け動画」の存在を指摘している。またハギーワギーの「現象」が話題になればなるほど、よからぬ連中がこうした動画を利用して、本当に子どもを標的にする可能性も高くなる。実際にネットトロールはOmegleといったプラットフォームに潜入し、モモで子どもたちを震え上がらせたではないか。

「悪質なオンラインメディアは事実とフィクションのギリギリの境界で、行動に移すかはさておき、ファン層を構築します。それらは無防備な人々に広がって影響を及ぼし、フィクションと現実を見誤る危険をはらんでいます」とオンドラック氏は言い、2014年にウィスコンシン州で起きたスレンダーマン死傷事件を例に挙げた。この事件では、2人の少女が友人を殺してインターネット上の架空のキャラクターに生贄として捧げようとした。「そうなれば悲劇になりえます」

だが一方で、そうした可能性がずっと低い場合もある。「適正年齢ではない時に、悪質な画像に出くわしただけ、という場合もあります」とオンドラック氏。ソーシャルメディアやアルゴリズムの仕組みに詳しくない保護者も十分理解しているだろうが、ネットの世界か否かにかかわらず、こうした危険は子どもたちの生活のいたるところに潜んでいる。

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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