リンダ・リンダズが語る音楽的ルーツと4人の成長、ブルーハーツと日本への想い

リンダ・リンダズ(Photo by Zen Sekizawa)

2021年5月4日、アジア系およびラテン系アメリカ人の女性4人からなるパンク・バンド、リンダ・リンダズがロサンゼルスの公共図書館でライブを行った。数週間後、そのライブ動画がSNSで大きな話題となる。

そこで演奏された、ティーンエイジャーの彼女達が人種差別と性差別に「No!」を突き付けた「Racist, Sexist Boy」はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロやザ・ルーツのクエストラヴも大絶賛。一躍「時の人」となった彼女達を音楽業界が放っておくはずもなく、早くも5月末にはパンクの名門、Epitaphとの契約締結が発表されたのだった。

あれから約1年。バンド・メンバーのルシア&ミラ姉妹の父親であるカルロス・デ・ラ・ガルサ(スカ・パンク・バンドとして有名なリール・ビッグ・フィッシュの元メンバーで、グラミー賞受賞経験もある音楽プロデューサー!)がプロデュースした1stアルバム『Growing Up』を4月にリリースし、SUMMER SONIC 2022での来日も決定している彼女達に話を聞いた。




四者四様のルーツ

―私(筆者の岡俊彦)は映画『モキシー ~私たちのムーブメント~』であなた達がビキニ・キルの「Rebel Girl」とマフスの「Big Mouth」を演奏しているのを見て、リンダ・リンダズを知りました。自分は肩にマフスのロゴのタトゥーを入れているほど彼らの大ファンで。

エロイーズ:Wow!!

マフスのキム・シャタックが亡くなったばかりだったこともあって、「自分と同じものを好きな人達がいる!」「キムのスピリットを受け継いでる人達がいる!」と感じて、とても感動しました。どうしてこの2曲をチョイスしたんですか?

エロイーズ:あの2曲は、既にバンドでコピーしてた曲で、練習も積んでて、上手く弾ける曲だったからだと思う。「Rebel Girl」のほうは、映画の主旨にぴったりだっていうのもあった。もちろんマフスもビキニ・キルもみんな大好きだし。マフスのタトゥーが入っているなんて、めちゃくちゃクール!

【コラム】映画『モキシー』でマフスを奏でた意味




― 『モキシー』で主人公がビキニ・キルの「Rebel Girl」と出会う瞬間のような経験がみなさんもあったのでしょうか?

ルシア:(あの映画の主人公と同じような)出会いの瞬間はなかったけど、子供の頃からパンクも含めていろんな音楽を聴いてきた。両親が好きで聴いていた音楽が、今の私達が好きな音楽でもある。例えば、ヤー・ヤー・ヤーズ、ダム・ダム・ガールズ、ベスト・コーストとか。

ミラ:マフスもね。

ルシア:そうそう。ビキニ・キルも、もちろん昔から大好き。それが今やこうして、彼らと知り合うことができたっていうのは、凄く嬉しいし、不思議な巡り合わせだと感じる。「ビキニ・キルの前座をやったの」とか言えちゃうんだもん。ダム・ダム・ガールズのクリスティン・コントロールを知ってるし、ベスト・コーストのべサニーとボブも知ってる。子供の頃は彼らの曲に合わせて歌うのが大好きだった。巡り巡って、彼らと知り合えた感じ。しかも、まだ15歳だっていうのに!

ベラ:私の両親は別にミュージシャンやアーティストというわけじゃなかったけど、家ではいつも音楽がCDでかかって、そのほとんどがラテン・ロックだった。母はアメリカ出身じゃないから、母国の音楽をしょっちゅう聴いてた。そうやってロックには小さい頃から触れていたけど、みんなみたいにパンクではなかった。



―ビキニ・キルのキャスリーン・ハンナの音楽や考え方は、あなた達にどんな影響を与えたと思いますか?

ルシア:彼女がいなかったら、「自分達も音楽が作れる」という発想には至らなかったと思う。彼女はまさに革命を起こした。多くの女性アーティストの背中を押してくれた存在で、今の私達は彼女のお陰でこうしている。マジで。その影響は計り知れない。まず、ハリウッド・パラディアムでビキニ・キルのライブの前座をやらせてもらったこと。そこにエイミー・ポーラー監督が来てたのがきっかけで『モキシー』の出演が決まったの。そう考えると気が遠くなる。自分達が飛び込んだ音楽シーンの中で、キャス
リーン・ハンナは絶対的なカリスマで、とにかくカッコいい人。自分の信念のために闘っていて、私達もそうありたいと思っている。

ミラ:私達が、こうして音楽をやっていられるのもキャスリーン・ハンナのお陰。少なくとも私は、彼女の音楽を聴いて刺激を受けたし、凄く影響された。彼女は本当に素晴らしいと思う。


Photo by Randy Holmes/ABC via Getty Images

―1stアルバムの『Growing Up』、本当に素晴らしかったです! パンキッシュなバンド・アンサンブルと息の合ったコーラス・ワークが融合し、とてもポップに仕上がっていて、個人的にはザット・ドッグやゴーゴーズを連想しました。また、「Nino」ではXの「Los Angeles」からの、「Why」ではジョーン・ジェットの「I Love Rock ’n’ Roll」からの影響も感じました。今回のアルバムを作るにあたって、サウンド面で特に影響を受けたアーティストはいますか?

エロイーズ:ゴーゴーズもザット・ドッグもみんな大好き! 引き合いに出してくれて嬉しい。

ベラ:Xも!

エロイーズ:そうそう、Xも! 「Nino」のハーモニーは、私達も「これって、Xのハーモニーじゃん?」ってなった。

【コラム】LAパンクとリンダ・リンダズの関係




ゴーゴーズのジーナ・ショックをゲストに招き、同バンドの「Tonite」をカバー

ルシア:HBO Maxでやっている『Take Out with Lisa Ling』って番組のテーマ曲を書かせてもらったんだけど、その曲にもXっぽいハーモニーがあったりするの。私が影響を受けたのは、ほとんどがインディ・アーティストで、ザ・ベスとか。実は数週間前に彼女達の前座をやったばかりなんだけど、めちゃくちゃ楽しかった。あとは、ザット・ドッグやスリーター・キニーの影響も少しあったと思う。

ミラ:私にとっては、スリーター・キニーの存在が大きくて。他にはパラモアとヘイリー・ウィリアムスもそう。あとはベスト・コーストとブリーチドあたりが大きいかな。

エロイーズ:昔からLAパンクとか大好きだけど、アルバムで自分が書いた曲は、メロディが立っているアーティスト、例えばレッド・クロスとか、ミラが言ってたベスト・コーストとかブリーチドとかからの影響が大きいと思う。あと、アップセットも! それから、アルバム制作中はブラック・フラッグとかアドレッセンツをよく聴いてた。

ベラ:今回の曲作りをしてた時、ビエラというバンドをけっこう聴いてたのと、セルジオ・メンデスとかボサノヴァもたくさん聴いてた。

Translated by Yuriko Banno

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