プロレス界の超新星、清宮海斗が創る方舟の未来

自らに課した「エメラルドグリーン」という使命からの脱却

清宮:(デビュー3年で団体の頂点に立てたのは)出逢いに恵まれていたからだと思います。格闘技経験のない人間に、プロレスの基礎の基礎から教えてくれた大先輩の小川良成さんとの出逢いもそうですし、海外遠征で広い世界を知ることができたのも、自分にとっては貴重な出逢いでした。杉浦さんの下について学べたことも大きかったですね。

プロレス界では間違いなく“天才”のひとりに挙げられる選手だが、その一方、彼の言動には、常に爽やかな優等生的印象が付きまとう。そんな清宮の“個性”に対し、とある選手から「アクが足りない」との厳しい指摘を受けたのも、記憶に新しいところだ。現在のノアマットは藤田和之をはじめ、武藤敬司や船木誠勝といったレジェンドたちがヘビー戦線を席捲しているのに加え、ジュニア戦線もEitaやYO-HEYなど、アクの強いレスラーが鎬を削りあっている。いずれも中心に立つのは、いわゆる“生え抜き”ではない選手たちだ。残念ながら、そこにスーパーノヴァの姿はない。

もちろん「新たな血」が現在のノアを盛り上げ、ファンの増加につながっているわけだが、それだけに現状に対し歯がゆい想いを抱くファンも少なくはない。なにより、生え抜き中の生え抜きであり、常に「ノアの中心に立つ」、「ノアを盛り上げる」と公言している清宮自身、忸怩たる想いを抱えている。

清宮:(アクが足りないと言われたことに対して)気持ちはあっても、それを伝える力が足りないというのは感じています。面白くない答えかもしれないですけど、結局は自分が信じていることを言い続け、体で示し続けていくしかないんですよね。周りからどういわれても、しつこく続けていくことが「アク」になるんじゃないかって思います。もちろん現状には満足していません。藤田さん、船木さん、そして武藤さんといった外から来た人たちはもちろん、杉浦さんや丸藤さんのようにノアを守ってきた人たちを含めた「とてつもなく分厚い層」を自分がぶち抜かなければ、本当にノアの中心に立つことができないと思っていますから。

その決意は、現在のコスチュームにも示されている。三沢光晴の遺志を継ぐ“ノアの申し子”の証として身にまとっていたエメラルドグリーンを、さっぱりと脱ぎ捨てたのだ。

清宮:この1、2年の間は、ほとんど結果も出せず、自分のプロレスがわからなくなっていたんです。「ノアの中心に立つ」、「ノアを盛り上げる」という気持ちは変わらないけど、それが変に重たくなりすぎていたのかもしれません。これも出逢いの話になってしまうんですけど、そんな時期に武藤さんと闘う機会を得て、プロレスの“豊かさ”を知ることができたんです。まず「自分のため」に闘うことが、巡りめぐって「ノアのため」になるということを教えてもらったというか。思い切ってコスチュームを変えたのは、そうした気持ちの変化のあらわれでもありますね。

以降の清宮は、文字通り“吹っ切れた”ファイトを展開。優勝こそ逃したものの、昨年の「N1-VICTORY」でも感情をあらわにした好試合を連発する。蛹が蝶になるように、プロレスラー清宮海斗はエメラルドグリーンを脱ぎ捨てることで、新たな“個性”をリング上で爆発させたのだ。



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