ブロッサムズが語る「変化」への飽くなき挑戦、アークティックとThe 1975からの学び

ブロッサムズ(Photo by Ewan Ogden for Rolling Stone UK)

 
過去のアルバム3枚中2枚が全英チャート1位を獲得。絶大な人気を誇るUKロック・バンド、ブロッサムズが通算4作目となるニューアルバム『Ribbon Around The Bomb』を4月29日にリリースする。新鮮なサウンドの秘密を語った、メンバー5人の最新インタビュー。

「70年代のあらゆるものがここにぶちまけられたみたいだ!」とブロッサムズのドラマー、ジョー・ドノヴァンは冗談を飛ばした。

時は2月中旬、曇天の水曜日の朝。イギリスのストックポートにあるリハーサルスペース兼“非公式の司令部”にいるブロッサムズのメンバーは上機嫌だ。グレーター・マンチェスター南部に位置するストックポートは、メンバーが幼少期を過ごした場所。彼らは、いまもここを拠点としていることに誇りを抱いている。

建物の外観を見る限りは何の変哲もない工業団地の一棟のようで、それは洗車場と自動車修理工場の間に立つ。修理工場の整備士たちは、著名なご近所さんの居場所を嬉々として教えてくれた。

建物の中に足を踏み入れると、そこはまったくの別世界だ。ジョーが言ったように、メインのリハーサルルームの至るところに70年代の要素が散りばめられている。ダンスフロア向きのパーティーチューンで名を馳せたブロッサムズにはいかにもふさわしい。

幾何学柄のプリントに覆われた防音パネルが壁中に張り巡らされる一方、フローリングは寄せ気張り。こうした内装に囲まれながら、バンドメンバーのジョー・ドノヴァン(Dr)、トム・オグデン(Vo)、チャーリー・ソルト(Ba)、ジョシュ・デューハースト(Gt)、マイルス・ケロック(Key)は、部屋の隅にある座り心地の良さそうなベルベットのソファの上でくつろいでいる。アークティック・モンキーズのフロントマン、アレックス・ターナーが『Tranquility Base Hotel & Casino』のコンセプトを模索した際に思い描いたような空間、あるいはTwitterを通じて70年代風のラウンジエリアに感化されたミレニアル世代があこがれるような空間である。


Photo by Ewan Ogden for Rolling Stone UK

豪華な雰囲気のリハーサルルームは、2022年におけるブロッサムズの立ち位置を的確に証明している。ここは、2016年以降アルバム2作が全英アルバム・チャートの1位を獲得したことで、UK最大のギターロック・バンドとしての地位を確立した彼らにとっての“ホーム”なのだ。

デビューアルバム『Blossoms』(2017年)、2作目『Cool Like You』(2018年)、3作目『Foolish Loving Spaces』(2020年)という3作のアルバムが、シンセサイザーの音色が陶酔を誘うABBA風ディスコミュージックからトーキング・ヘッズばりのニューヨーク・ファンクに至るまでの多種多様な要素を取り入れてきたように、通算4作目となるニューアルバムでも彼らはふたたび新境地に挑んでいる。

4月29日リリースのニューアルバム『Ribbon Around The Bomb』は、現時点でブロッサムズにとってもっとも内省的なアルバムと言えるだろう。これまでふんだんに使ってきたシンセサイザーの音色が抑えられている代わりに、著名なシンガーソングライターへの愛が堂々と掲げられている。

「いままでは、僕が聴いたものはすべて僕らの楽曲に影響を及ぼした。前作に取り組んでいた時はトーキング・ヘッズにハマっていて、楽曲もその影響を大いに受けていた」とトムは語る。

「でも今回は、楽曲は楽曲として自立していた。それに、わずかながらもポール・サイモンのようなサウンドにすることにも成功した。本物のストリングスを交えながらレコーディングもしたよ。だから、サウンド的にも壮大なアルバムに仕上がっている」



影響を受けたシンガーソングライターはポール・サイモンだけではない。先日先行リリースされたシングル「Ode To NYC」の軽快さの秘密は「少量のハリー・ニルソン的な要素」にあるとトムは指摘する。この曲では、稀代のシンガーソングライターと称えられたニルソンのアメリカらしい楽曲を即座に想起させる、軽やかなギターが高らかに奏でられている。

曲名からもわかるように、「Ode To NYC」のテーマはニューヨーク・シティだ。そして現時点でもっとも観察的な楽曲であると同時に時折パーソナルな側面を覗かせる。

Translated by Shoko Natori

 
 
 
 

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