ブロッサムズが語る「変化」への飽くなき挑戦、アークティックとThe 1975からの学び

 
「僕らは固い絆で結ばれている」

新たに見出されたこの自信は、パンデミック前に行われたバンド史上最大のライブとは対照的だとトムは明かす。ストックポート・カウンティFCのホームであるエッジリー・パークで1万5000人のファンの前で行われた2019年の大々的な凱旋ライブは、ブロッサムズのキャリアにおける頂点を飾るはずだった。だがライブを終えたトムは、成功を心から噛みしめることができずにステージを後にした。


エッジリー・パークでのライブ映像も収めた、ブロッサムズのドキュメンタリー作品『Back To Stockport』のトレイラー映像

「エッジリー・パークでライブをしたけど、僕は満足することができなかった」とトムは言う。「理由を分析しながらステージを降りたのを覚えている。完璧さにこだわりすぎるあまり、『あそこはもっと改善しないといけない、あそこでは少し音程を外した、観客は退屈そうだった』と思った。夏のあいだ中、僕は頭がおかしくなるんじゃないかってくらいこのことについて考えていたんだ」

著名なシンガーのパフォーマンスを見るにつれて事態は悪化した、とトムは言う。「僕はただ、フロントマンとしての自信が持てなかった。別のフロントマンと自分を比べていたんだ。The 1975を見ながら『(マット・ヒーリーは)本当に最高のフロントマンだけど、僕はクズだな』と思った。それは事実じゃないのに、自分で自分を追い込んでいた。だから前作をリリースした時は、『そうだ、これが僕のいるべき場所なんだ』と実感した。それなのに、ロックダウンときた!」

新たに手に入れた自信をトムがようやく試すことができたのは、満員のオーディエンスの前で行われたマンチェスターのAOアリーナ公演だった。公演はパンデミックによって延期されていた。

公演は大成功だった。だが、バンドにとってはさらに大きなことへの第一歩に過ぎない。メンバーは、来年ストックポートで開催される大々的な野外ライブの計画を明かしてくれたが、マンチェスター・シティの熱狂的なファンであるジョーは、まだまだここで終わるわけにはいかないと言う。

「エティハド・スタジアム(マンチェスター・シティのホームスタジアム、最大収容人数は約5万5000人)だってあるさ」とジョーは言う。「ザ・コーティナーズ(マンチェスター出身の4人組バンド)のようなバンドがエティハド・スタジアムでライブをしているのを見ると、『僕らにだってできるはず』と思わずにはいられないよ。僕らの行き先に限界なんて存在しないんだ」


Photo by Madeleine Penfold

未来の無限の可能性に対する自信は、メンバー同士を結びつけている力強い絆にある程度起因しているとあなたは感じるかもしれない。

ひとつの要因は家族の絆だ(昨年の夏にジョーのきょうだいのケイティさんと結婚したトムは、晴れてジョーの義兄弟となった)。だが、より大きな要因は、彼らの関係が友人からバンドへと発展したことかもしれない。

「僕らの友情は、ブロッサムズより年季が入っているんだ」とジョシュは言い添えた。「ツアーやバンドとしての経験は、僕らの関係をより強固なものにした。でも、ブロッサムズとして活動する前から、僕らは親密な関係を築いていたんだ。少なくとも、バンドを結成する前から互いのことを知っていた」

トムは次のように言葉を足した。「このバンドには本当の意味でのエゴがないんだ。いくらかのエゴは必要だけど、有害になるようなエゴはいらない。僕らはみんな似たような境遇で、同じ地域で成長し、同じようにクソみたいなことを経験した。僕らは固い絆で結ばれている。それを台無しにされたくないから、絶対に他人を立ち入らせない」

チャーリーは次のように言う。「ストックポートの水にはなんだか妙な振動が紛れていて、僕らはみんなその影響を受けているんだ」。この“振動”がストックポートから世界に向けて、いつまでも大音量で奏でられることを望んでやまない。



From Rolling Stone UK.




ブロッサムズ
『Ribbon Around The Bomb』
2022年4月29日リリース
視聴・購入:https://umj.lnk.to/Blossoms_RAB

Translated by Shoko Natori

 
 
 
 

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