横浜の"ロック"ステーションTVKが音楽シーンに残した功績、兼田達矢と語る

書籍『横浜の"ロック"ステーション TVKの挑戦』表紙画像

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2022年4月の特集は「最新音楽本2022」。パート3はディスク・ユニオンから発売された『横浜の"ロック"ステーション TVKの挑戦』にスポットを当てる。著者の音楽ライター、ラジオやテレビなどの番組企画構成、編集をしている兼田達矢本人をゲストに迎え、本を紐解く上で思い入れのある名曲を辿りながら内容について語る。

田家秀樹:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人・田家秀樹です。今流れているのはダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンドの「堕天使ロック」。1980年に自主制作盤で発売になったライブアルバム『海賊盤~LIVE FIGHTING 80’S』からお聴きいただいております。CDになっていないのでアナログ盤のレコードからお送りしております。この曲のオリジナルは言うまでもなく、ジャックスです。今日の前テーマはこの曲です。

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堕天使ロック / ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンド

今月2022年4月の特集は「最新音楽本2022」。今週は3週目です。去年末にディスク・ユニオンから発売になりました『横浜の"ロック"ステーション TVKの挑戦』という本です。TVKはテレビ神奈川ですね。UHF。70年代、80年代、90年代、ロックの発信地であり続けた横浜のテレビ局のドキュメンタリーです。TVKとはどんなテレビ局だったのか、どんな人たちが働いていたのか、音楽シーンにどんな功績を残したのか、アーティストたちは何を求めていたのか。出演者、関係者などを取材してまとめたドキュメントです。今週のゲストはその著者の兼田達矢さん。1963年生まれで雑誌『FM STATION』の編集部、WOWOWの音楽番組制作者を経て、1992年から音楽ライターとしてだけではなく、ラジオやテレビなどの番組企画構成、編集、電子書籍の発行と幅広く活躍されております。こんばんは。

兼田達矢:どうもこんばんは。よろしくお願いします。

田家:電子書籍の発行とかもやっているんですね(笑)。

兼田:ええ、まあマイペースでやっております。

田家:1人でですか?

兼田:デザイナーの方と2人だけで。

田家:今日は兼田さんにこの本を語るときに思い出のある曲を選んでいただきました。この「堕天使ロック」が入っていて、「え! これが選ばれてる!」と思ったりしたのですが、思い入れがあるんでしょうか?

兼田:他のバンドもそうなんですけど、まずはアーティストで選んだんです。ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンドについては、僕はずっと歌謡曲が好きで、ジュリーが大好きで聴いていたんですけど、そこに歌謡曲シーンの中でロック的なヒット曲を歌うバンドとしてダウン・タウンが出てきて。しかも宇崎さんはそもそもブルース、ジャズがお好きな方だと後ほど知るんですけど、そういうものに道を開いてくれた存在なんです。同時に日本ロックの脈絡みたいなものも繋がっているバンドだと思って、だからジャックスのカバーがいいかなと思いました。

田家:自主制作盤は「ファイティング80’s」のライブ盤なわけで、このアルバムの話も追々お訊きしていこうと思うんですけども、兼田さんは兵庫県の姫路生まれなんでしょ?

兼田:18歳までそこにおりました。

田家:お書きになったTVKは横浜の放送局なわけでどういう出会いをしたんですか?

兼田:宇崎竜童さんがパーソナリティをやられていた「ファイティング80’s」が神戸の局、サンテレビで、姫路でも放送されていて。それで番組を知っていたんですけど、そのときはただの高校生でしたからサンテレビでそういう番組をやっているんだと思っていたんです。東京に出てきてから、あの番組はテレビ神奈川がやっていたんだと知りました。

田家:サンテレビの中で「ファイティング80’s」は他の番組とは違う何かがありましたか?

兼田:サンテレビって本当に阪神タイガースのチャンネルみたいで。完全生中継とかやっていて、ある意味ではすごく画期的なチャンネルだと思うんですけど、そんな局が音楽番組をやるような印象がなかったんです。最初に観たときも、「プロ野球ニュース」か何かを観ているときにザッピングしてたらダウン・タウンが演奏していたから、「あっ」と思って観始めた感じです。

田家:それが「ファイティング80’s」だったんだ。東京に来てからはもっと密接なものになったと。

兼田:そうですね。

田家:「堕天使ロック」ってライブ盤で13分50秒あるんですよ。これはなかなかまるごとご紹介できないな、時間がもったいないなということで、前テーマで雰囲気だけお伝えするということになってしまって。代わりと言ってはなんですが、ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンドでこの曲から始めたいと思います。1980年に発売になった「鶴見ハートエイク・エイブリナイト」。

Rolling Stone Japan 編集部

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