BEYOOOOONDS初武道館公演、「楽しすぎて泣きそうになる」という唯一無二の感覚

「全曲振り返りスペシャルメドレー」の衝撃

この日は数々の新曲が披露され、観客がカスタネットで参加した「涙のカスタネット」も楽しかったのだが、BEYOOOOONDSの真髄と言えるのはアンコールで披露された「全曲振り返りスペシャルメドレー」ではないだろうか。「このライブをもう一度頭から観れたらいいと思いませんか?」という一岡伶奈の呼びかけから始まったこのメドレーは、タイトルどおり、本公演の1曲目から数小節ずつノンストップでつなげたもの。はっきりいって異常である。当然、テンポチェンジは激しく、楽曲の世界観もコロコロ変わるため、観ているほうはついていくので精一杯。しかも、本編では披露していないハロプロ研修生の曲の1フレーズを里吉が歌ったり、本編ではしっかり噛じっていたはずのハムカツを取り逃した西田汐里がぴょんぴょん飛び跳ねたり、これでもかというぐらい楽しい小ネタが盛り込まれていた。





その反動もあって、ラストに披露された名曲「伸びしろ~Beyond the World~」は本当に感動的だった。<だけど きっと大丈夫 だけど なんとかなるさ 不安感じる度に 言い聞かせた言葉>という歌詞で始まるこの曲はコロナ禍以前に発表されたものだが、今の状況と重なる部分が多すぎて、よりエモーショナルな歌唱となった。前述のパートを担当した清野が声を詰まらせたのも無理はない。全員が輪になって内側を向いて歌うという演出もメンバーとしてはかなり胸にくるものがあっただろう。<まだ何も終わっちゃいない 今始まったのさ>という歌詞は、ここから再び前進を始める彼女たちの姿にぴたりと重なった。

コロナ、戦争、今年に入ってから相次ぐアイドルグループの解散やメンバーの卒業など様々な要因が重なり重苦しさを感じていたが、BEYOOOOONDS初の武道館公演はほんのひとときだけでもネガティブな気分を蹴散らす楽しさに満ちあふれていた。「LIVE BEYOOOOOND₁St」でも感じたことだが、「楽しすぎて泣きそうになる」という経験はBEYOOOOONDSのコンサートでしか味わったことがない。

今年3月に公開されたインタビューで平井が「こういう時期だからこそみなさんを元気にしたい、応援したい」という趣旨のことを話していたように、その想いは約140分に及んだショーの隅々に感じられた。自分たちが楽しむことももちろん大事だけど、コロナ禍を経て、「どうやったらファンに楽しんでもらえるか、どうやったら笑ってもらえるか」という意識がかなり強くなっているように見えた。それはアンコール時の挨拶に顕著だった。「みなさんを応援するアイドルで居続ける」(西田)、「たくさんの方に愛されるアイドルで居続ける」(前田)、「悲しいことがあったときにBEYOOOOONDSのことを思うことでハッピーになれるような存在になりたい」(島倉)、「BEYOOOOONDSって優しいんですよ。この優しい世界にまた遊びに来てほしい」(小林)といった言葉の数々は短いながらもポジティブなものばかりだったし、「~したい」という未来へ向けた意志表明が多かった。そんな中で、最後に「推し変とかしないで、ずっと応援してくれたらと思います」と落としたリーダー一岡はさすがだった。

BEYOOOOONDSのコンサートは非常に手が込んでいる。豪華なステージセットやきらびやかな照明ということではなく、歌、ダンス、演技という12人のメンバーの全身から発せられるものがステージを豊かにしていた。たとえシンプルな舞台だとしても、彼女たちにはそこにはない何かを我々に見せる力がある。BEYOOOOONDSは本当に素晴らしい。本公演のいち早い映像化が待たれるし、できるだけ早く彼女たちの新たなショーが観たい。メンバーがステージを去ったあとにスクリーンに映し出された「Let’s continue」という言葉が心強かった。

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