ブロック・パーティーが語る、ギターロック復活の理由「音作りの旅が終わることはない」

ブロック・パーティー(Photo by Wunmi Onibudo)

 
そのギター・サウンドは鋭く、連打を繰り返すビートは激しい。ブロック・パーティー(Bloc Party)のニュー・アルバム「Alpha Games』は、結成から20年を迎えようとするバンドにとって、ポスト・パンクに回帰した作品と言えるだろう。2016年リリースの前作『Hymns』直前に新たなベーシストとドラマーを迎えて新体制となった4人組はいま、ギターバンドとして見事にリザレクションを果たした。

本作のまるで回春剤でも飲んだかのような勢いや溢れんばかりの生命力には、2018〜2019年にバンドが行った1stアルバム『Silent Alarm』全曲再現ツアーでの経験も関係しているという。ツアーの道中、バンドはかつての自分たちが鳴らしたサウンドのパワーを再発見しつつ、現4ピースならではの新たな化学反応に高揚と興奮を喚起されたのだ。

ともにニック・ケイヴ関連やアイドルズ諸作への貢献で知られるニック・ローネイとアダム・グリーンスパンをプロデューサーに迎えた『Alpha Games』は、若い世代の台頭のもとでUKギターロック復権が謳われている昨今において、べテラン・バンドの健在っぷりを示す快作だ。ときにノイジー、ときにスペーシー、ときに艶やかにと、曲によってさまざまに表情を変えるギター・サウンドは、『Silent Alarm』時からのファンはもちろん、新しいリスナーにとっても刺激的に響くことだろう。本作は、ギターってまだまだいろんな可能性があるんだな、と驚かせてくれるアルバムなのだ。

そんな『Alpha Games』について話を効くなら、やはりこの人。というわけで、フロントマンのケリー・オケレケとともにバンドの根幹を成すギタリスト、ラッセル・リサックに『Silent Alarm』再現ツアーを経てのバンドの状態や最近のUKシーンへの印象、そして新作におけるギター・マジックの正体についてを教えてもらった。



―『Silent Alarm』全曲再現ツアーでは、曲順をアルバムとほぼ反対に演奏していたのがおもしろかったです。そうしたセットリストにした理由は?

ラッセル:それは、アルバムの最後の方の数曲がダウンテンポでスローなトラックだから。ライブの状況だと、そういうトラックがクライマックスに来てしまうと少し盛り下がってしまうかなと思ってね。だから曲順を逆にして、加速させていくことにしたんだ。ショーではそっちの方がうまく機能すると思って。

―あらためて『Silent Alarm』を演奏してみてどんなことを感じられましたか?

ラッセル:僕自身は、シンプルにあのアルバムの曲を再び演奏することが楽しかった。ギター奏者にとっては、あのアルバムの曲を演奏するのはすごく忙しいからね(笑)。曲の中にギターがぎっしりと詰まっているから、あのセットはかなり激しい90分なんだ。でも、それが楽しかったし、同時に以前よりもシンプルにも感じたんだ。というのは、最近の僕とケリーがステージに並べているエフェクターの数は前よりも全然多いから。『Silent Alarm』を書いていた時の僕たちは、今よりも機材を持っていなかったし、あのアルバムの曲の演奏は今と比べるとすごくシンプルでもある。最近の曲では、手と足の両方を動かしまくらないといけない。だから、『Silent Alarm』のショーでは、リラックスして演奏できたとまでは言わないけど、足に集中しなければいけない時間が少ないぶん、考えすぎずにより楽しんで演奏することができたと思う。




ーいまのあなたが演奏して、もっとも楽しかった楽曲をその理由も含めて教えてください。

ラッセル:「The Pioneers」は、常に僕のお気に入り。書くのがすごく楽しかったから。あの曲はいまだに僕にとって特別な曲だけど、長い間演奏していなかったから、また演奏できたのはすごく気持ちが良かったね。



ー『Silent Alarm』はリリース当時から高く評価されており、ここ日本のリスナーからも熱狂的に支持された作品でした。その証拠の一つに日本の小説家、津村記久子の青春小説「ミュージック・ブレス・ユー!!」にはブロック・パーティーを最も好きなバンドだと公言している男の子のキャラクターが登場します。あの作品のどういった側面が、世界中の若いリスナーを魅了したのだと思いますか?

ラッセル:それは最高。その小説、あとで検索してみるよ。何が人々を魅了したのかは、僕にもわからない。当時の僕らは若かったからとにかくたくさんのエネルギーを持っていたし、そこから生まれるあの強烈さや激しさを皆に気に入ってもらえたのかもしれない。あと、あの作品は当時の周りのどの音楽とも何かが少し違っていたと思う。特にあの時期のイギリスのギター・ミュージックは、自分たちにとってあまりエキサイティングではなかったから、僕らはそれとは異なる音楽を作ろうとしていたんだ。

あと、ケリーと僕はあの当時よくクラブに行っていて、エレクトロニック・ミュージックやダンス・ミュージックにハマっていたから、そういったサウンドの要素をギターと組み合わせようともしていたしね。ちょうど同じ時期、ヤー・ヤー・ヤーズやラプチャーとかニューヨークのバンドは結構それをやっていたんだ。でも、UKにはまだそういったサウンドを作るバンドがあまりいなかった。多分、僕らと同じようなことを思っていた人たちが他にもたくさんいたのかもしれない。彼らがそういった部分に魅力を感じてくれたんじゃないかな。

Translated by Miho Haraguchi

 
 
 
 

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