米団体指導者、女性信奉者の尊厳を蹂躙 性的行為も【長文ルポ】

Photographs in illustration by Keilan McNeil

2017年5月、米カリフォルニアを拠点に活動するヨガ講師で7万5000人のフォロワーを持つインスタグラマーのジェイド・アレクトラさん(34歳)は、友人から1本の動画を受け取った。そこには今まで聞いたことのないスピリチュアル指導者が映っていた。小柄で、金髪で、快活で、妖精のような風貌をしたその男は、やわらかいオランダ訛りの英語で自己実現と別次元の意識への到達を約束していた。

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彼の教えはスピリチュアル系ではよくある禅問答ばかりだったが、本人は典型的な霊的指導者とはまるで違っていた。彼はしょっちゅうInstagramで葉巻と高級ブレンデッドウイスキー好きをアピールしていた。鍛え上げた二頭筋とセクシーな髪型は、スピリチュアルな指導者というよりも、父親の金でスタンフォード大学に裏口入学したボンボンの遊び人に限りなく近かった。

指導者の名前はベンチーニョ・マッサロ。アレクトラさんも最初はまったく興味がわかなかなかったそうだ。彼のコンテンツについても、「とてもくだらなかった。彼の言っていることはほとんど謎でした。『すべてを知ることは何も知らないこと、すなわちそれがすべてを知ることだ』とか」と振り返る。「何がすごいのか全然わからなくて、とにかく理解不能でした」 だが当時ロサンゼルスに住んでいたアレクトラさんは、依存症リハビリセンターの講師仲間だったその友人を信頼していた。なのでさっぱり理解できなかったものの、とりあえずマッサロのInstagramをフォローすることにした。「結構魅力的だし、若いし、同年代だし、そのうち私もわかるようになるかも、という感じでした」と彼女は言う。

ある時マッサロはPodcastで伝統的な一夫多妻制の概念を打ちこわし、多重恋愛を勧めた。当時恋愛に振り回されていたアレクトラさんは彼にDMを送り、自分がどれだけ傷ついたかを伝えた。2人は短い間、簡単なやりとりをした。オーダーメイドのスーツに高級な食事、インスタ映えする異国的な場所をこよなく愛するマッサロは「まさにグレート・ギャッツビーそのものという感じがしました」と彼女は言う。「彼は今まで出会ったスピリチュアルの師匠とはまるで正反対でした。彼は最高にイカしていて、そういう立ち居振る舞いが気に入りました。私にはとても新鮮でリアルに見えたんです」

アレクトラさんはマッサロの女友達の1人、コリー・カトゥーナのInstagramをフォローするようになり、1時間の霊気療法を無料で提供したりもした。2人はたちまち意気投合したそうだ。すると数カ月後、カトゥーナから突然隠れ家に招待された。ただし具体的な場所は教えられず、来たいなら秘密保持契約に署名しなければならない、とも言われた。契約書には、違反した場合はマッサロから30万ドルの違約金で訴えられる場合もある、という条文もあった。アレクトラさんは嫌な予感がすると同時に、興味を惹かれた。「行ってみたらクレイジーな乱交パーティが行われていて、獣たちの餌のネズミのように檻に投げ込まれるんじゃないかと心配になりました」

だが彼女はその瞬間、数カ月前に見てもらったタロット占いを思い出した。彼女は今の恋人より少し年上の男性と出会うだろう、その男性は生涯の伴侶ではないが、世のためになる人物で、彼と一緒にいつか素晴らしいことを成し遂げられるだろう、と占い師は言った。その後に起きた出来事はすべてあの瞬間のせいだった、と彼女は悔やんでいる。

【写真を見る】ともに偉大なことを成し遂げる男性と出会うだろう、とタロット占いで告げられた後、ベンチーニョ・マッサロと交際したジェイド・アレクトラさん

Translated by Akiko Kato

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