米団体指導者、女性信奉者の尊厳を蹂躙 性的行為も【長文ルポ】

徹底した性の二極化を掲げる

スピリチュアル系リーダーで、ウェルネス指導者で、意識の高いインスタグラマー。マッサロはソーシャルメディアで様々な顔を持つ、実に興味深い存在だ。世界各地に自立支援所を展開し、数千万回も閲覧されているYouTubeチャンネルでは、10年にわたって言葉巧みなレクチャー動画を投稿している。毎日InstagramやFacebookに投稿し、稼いだフォロワー数はおよそ100万人。彼が発信するメッセージは解釈の余地を与えない。最近の投稿でも、遠い目をしながら「あらゆる対象の根底に流れる主題は、それ自体がもっとも難解な対象だ」と語っている。「対象から自分を解放せよ。否定できる最後の対象であるがごとく。気持ちを集中させ、彼方に真の自分を実現するのだ」

彼は「テレポートや空中浮遊、さらに2つの場所に同時に存在することもできる」と公言している。また厳格な断食や食事療法を指示しているとも言われ、カルトの専門家によれば女性の信奉者を従順させるのに役立っているという(本人は否定)。彼と交際していた2人の女性に取材したところ、彼は褒美として、あるいは不品行の罰として、女性信奉者とセックスしている。彼の教義はあからさまな女性蔑視に偏っており、伝統的な男女の役割を二極化して信者に叩き込み、女性たちにはより活発な「男性的」衝動に抗うよう促している。2016年の投稿にも、女性らしさの定義は「輝きと従属」だ、と書かれている(ちなみに徹底した性の二極化は、カルトにはよく見られる傾向だ。自己啓発団体ネクセウムも似たような思想を標榜していた)。

マッサロの集団に関わったことで命を落とした人が1人いる。ハンサムな元大学テニス選手のブレント・ウィルキンスさんは、2017年に自ら命を絶った。事件直前、マッサロは旧隠れ家で自殺推奨ともとれる発言をしていた。ただちに警察の捜査が入り、マッサロと信奉者は逃亡した。それ以来、彼らはオランダの修道院からエクアドルのキトにあるスピリチュアルセンターに至るまで、世界のあちこちを転々としている(ウィルキンスさんの死は自殺として扱われ、結局マッサロは容疑者に上らなかった)。

2022年2月、マッサロの元信奉者3人が立ち上がり、Podcastとオランダの新聞デ・フォルクスクラント紙でマッサロを糾弾した。それがきっかけで、彼がカルト集団を率いているという疑惑が改めて浮上した。こうした疑惑は過去にもあった。とくに有名なのは2020年にガーディアン紙が掲載した暴露記事と、デジタルメディアViceが2019年に公開したドキュメンタリー『The Controversial Guru That Wants to “Upgrade Civilization”(原題)』だ(ドキュメンタリーにはマッサロ本人も出演し、カルトとレッテルを張られることについてこう答えている。「我々はカルトだ。好奇心が強く、理解と愛情の深い一族だ」)。だが新型コロナウイルスのパンデミックで大勢が人生の答えを探し求めた結果、マッサロのフォロワー数も飛躍的に増加し――Facebookでは100万人近く、YouTubeでは10万人以上の購読者を獲得――元メンバーやカルトを追跡する人々は懸念を抱いている。

Translated by Akiko Kato

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