柴那典が語る、平成30年間のヒット曲の背景を書いた評論集

世界に一つだけの花 / SMAP

田家:2002年平成14年で選ばれていたのがこの曲です。章の大タイトルは「SMAPが与えた赦し」。

柴:「平成を象徴する曲は何ですか?」って訊かれて、1曲だけ選べと言われたらこれを選ぶと思います。ただヒットしたということだけではなくて、社会といろいろな意味で結びついていた時代の象徴になった曲だと思います。

田家:この曲が反戦歌としていろいろな形で語られたことについても、柴さんの見解をお書きになられていますね。

柴:2003年3月にシングルとして発売されたんですけれども、当時アメリカとイラクの戦争が始まったばかりで。だからニュース番組とか、「紅白歌合戦」でも、戦争と絡めてこの曲を位置づける言説が多くて。歌詞をあらためて聴くと、戦争と結びつけて反戦歌と捉えるかどうかというのはちょっとどうだろうなと思うところはあるのですが、それ以上にSMAPというグループそのものが阪神淡路大震災、そして9.11からイラク戦争、何より東日本大震災と、日本の社会が平成の中で大きく揺れるときに歌を通して何ができるかということにその都度その都度向き合っていたグループだったんだなと、調べていく中で痛感したのがすごく大きかったです。

田家:実は2001年に選ばれているのがMONGOL800の「小さな恋のうた」なんですよ。大タイトルが「21世紀はこうして始まった」。小見出しが「9.11と不意のブレイク」というマンハッタンのテロと沖縄について語られている。

柴:そうですね。実は反戦歌という意味で言えば、むしろMONGOL800のアルバムに入っている他の曲の方が直接的な反戦歌なんですね。

田家:アルバム『MESSAGE』ね。

柴:沖縄である種の理想主義を込めて、これから平和な世の中がやってくるといいな、戦争なんてなくなればいいのにという歌を入れたアルバムを出したのが2001年9月。そのときに9.11が起こっているので、比べるとモンパチはブレイクにもすごく驚いたでしょうけど、変なふうに時代とリンクしてしまったと、すごく戸惑ったみたいで。当時、振り返ったインタビューでもいろいろなところで語っている。なので、21世紀の始まりには9.11のテロとその後の戦争と、動乱の中でヒット曲が作用して、人々に届いていたということもあらためて思いました。今から考えると20年前のことが何か繰り返されているような気もしなくもないですが。

田家:第三部「ソーシャルの時代」の曲をご紹介します。第三部は平成21年から31年、2009年から2019年までなのですが、平成22年で選ばれていたのがこの曲です。いきものがかりの「ありがとう」。大見出しは「ヒットの実感とは何か」。

Rolling Stone Japan 編集部

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