ドラマストアが語る上京した理由、終わりを起点に続くことを描く2ndアルバム

―じゃあ、こちらから挙げさせてもらいますが、「むすんで、ひらいて」は、〈これが居場所じゃないならなんと呼ぶのか これが生きると言うことじゃないのか〉という歌詞に励まされました。

長谷川:ありがとうございます。もともと、最後の曲はもっとわちゃわちゃって終わる体だったんですよ。とあるきっかけで、和也君から「大団円っぽく終わってもいいかもしれない」っていう提案があって、なるほどなと。“ザ・終わり”みたいな終わり方でもいいのかなと思ったんですよね。それで考えたら初手でこれが浮かんで、これはいったなと。メロディに関しては、それこそほんまにミセスの大森君(Mrs. GREEN APPLEの大森元貴)を降ろすぐらいに、いけるハイまで使ってやろうと(笑)。それでデモを送ったら、2時間後に和也君から「100点満点です」って返ってきて。じゃあ、これで進めようと思いました。今書きたいバラードって何かなと考えたときに、東京に来てから2ヶ月ぐらい何をする気も起らなくて、「どうしたらええんやろう」みたいな生活から救ってくれたのが、これまでの繋がりや新しい繋がりの人たちだったんです。そういう、人と人との繋がりを書いたつもりなんですよ。ただそれって、今になって気付く話じゃなくて、じつは人との関係を結んだりあるいは自分からほどいたり、ちぎったり結び直したりということは、ひらがなを覚えたてのめっちゃ小さい頃からやってきたことだなって思ったんですよね。だから、1つも漢字を使わずに、サビの部分は全部ひらがなで書きました。

―ああ、なるほど。そういう意味でひらがなだったんですね。ドラマストアは「君を主人公にする音楽」をコンセプトとしていますが、この2年間、世の中の変化に伴って1人1人の人生のドラマがより鮮明になったと思うんです。こう言ってはなんですけども、そういう意味では表現する人にとって今の世の中はモチーフが多くあるような気がします。

長谷川:この2年で新しく得たことってそれかもしれないですね。従来以上に多角的にものを見れるようになりましたし、ドラマや映画を観ていても、面白い以上のものを考えるようになったというか。MVの撮影でも、演出に口を出すようになったんですよ。「この演技ってこういう意味があってやってます? それめっちゃ良かったんで次も欲しいです」とか、「こういう設定のこの役だったら、この感情がないとおかしいと思うんですよ」とか、ペーペーが口出し始めたんです(笑)。それぐらいから、カメラワークとか色調とかが気になるようになってきて。なんでこんな幸せなシーンなのにこの映画こんなに暗く撮ってるんやろう? とか、ポスターのあれってああいう意味やったのかな? とか、そういうことまで気にするようになったんですよね。だから、僕らの音楽は巷で流行っている日記にメロディを付けたようなものには絶対したくないなと思っていて。日本人ならではの奥ゆかしさとか、行間を読むような、「月が綺麗ですね」が「I LOVE YOU」に聴こえるような、世界で一番むずかしい言語を使っている人間だという自覚を持って書こうという気持ちはより一層強くなりました。それで言うと、具体的な情景描写が多かった「ピクトグラム」はむずかしかったです。そこまでガチガチに固まった曲があったから、「アリストテレスは斯く語りき」みたいに何の形もない抽象的な曲も哲学史として書けたので、そういう意味では言葉を探して書けるようになっているなという成長は自分でも感じました。

―アルバムタイトル『LAST DAY(S) LAST』の意図するところは?

長谷川:“日々は続いて行く”という意味ですけど、「CONTINUE」って始まりを起点に続いていくということらしいんですよ。「LAST」って動詞化すると「終わりを起点に続いて行く」という意味らしくて。どっちかというとこの2、3年の耐えてきた時期って、前を見据えて希望があったというよりは、「ああ、また今日が終わっちゃったな」みたいな、日々を浪費するような日々に近かったんですよね。それでも、綱渡りで賞味期限があるようなこういう職業に於いての日々も続いて行ってしまうという気持ちもありました。1stアルバムは「これから始まるぞ」という12曲なのに対して、今作はしっかり歩んできた道を振り返りながら作った作品だな、ということでこういうタイトルにしました。

Rolling Stone Japan 編集部

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