マネスキンが語るロックバンドとしての信条、よりよい社会のために声を上げる意味

 
社会のために声を上げる意味

―昨年秋にはパリでGlobal Citizen Liveのステージにも立ちました。グラマラスなパフォーマンスをすること、ファッションアイコンであること、そして社会に対して声を上げるアクティビスト的な意識を持つことは、自分たちのなかでどのように結びついている?

ヴィクトリア:どれも自分たちの中から素直に出てくるもの。ステージに立って音楽をプレイするのが楽しくてたまらないし、その瞬間はありのままの自分たちでいられる。一方で、自分たちが大事だと信じているものもいろいろあるわけで、それに関して声を上げるのは、私たちがそういう人間だから。多くの人に自分たちの音楽を聴いてもらえる恵まれた立場を使って、音楽だけじゃない大事な問題についても発信できる。



―バンドはこれまでセクシャリティやジェンダーも含めて「自分らしくあること」や「自由であること」を打ち出してきました。

ヴィクトリア:様々な人間がこの世にいるということ、いろいろな人の在り方を示してあげることが凄く大事だと思ってる。みんなが同じでいなきゃいけないわけじゃない。昔は有名人といえば、みんな同じような容姿だったでしょ。「美とはこうじゃなきゃいけない」というステレオタイプが横行していた時代で、みんながストレートで、きちんとした同じような服を着ている。そんなのバカみたい。そうじゃない人たちに居場所がないと言ってるようなもので、世界に存在する多様性を完全に無視している。私たちは、みんなが自分らしく生きることが大事だと思っている。若い人たちの中には、自分を恥じていたり、自信が持てない人が大勢いて、そういう人たちが私たちを見て「自分らしくしていいんだ。人と違ってもいい、みんなが同じである必要はない」と思えたら、それは凄く意味のあることだと思う。

―そういうメッセージやバンドのアイデンティティはどうやって培われてきたものなんでしょうか。

ダミアーノ:最初は嫌な思いも沢山したさ。服装やメイクもそうだし、そもそも音楽をやって食べていくってこと自体、人から真剣に取り合ってもらえなかった。

ヴィクトリア:15歳だったら尚更よ!

全員:(笑)

ダミアーノ:でも俺たちはここまで続けてきて、そういった偏見にも打ち勝って、なりたい自分たちになることができた。成長を経て自信が持てるようになったんだ。だから、そういう自分たちの経験や知識を発信することで、自分たちほど恵まれた環境にいない若い人たちを助けたい。自分たちは、中傷や批判もたくさん浴びたけど、幸いなことに応援してくれる家族や友達もいた。でも応援してくれる人が周りにいない人たちだっているわけで、音楽を通してそういう人たちを助けたり、代弁したり、一人じゃないと思ってもらえたらいい。

―そういう文脈でリスペクトする先達のアーティストには誰がいますか? また同世代で共有するアティテュードを持っていると思えるアーティストやバンドは?

ヴィクトリア:いくらでもいるわ。デヴィッド・ボウイやマドンナ。

ダミアーノ:U2、ボノ。

ヴィクトリア:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。挙げだしたらキリがないわ。

ダミアーノ:今のアーティストも含めてね。

ヴィクトリア:もちろん。レディー・ガガはLGBTQコミュニティーのために多大な影響をもたらしたわ。

イーサン:レオナルド・ディカプリオも気候変動に関して声を上げてる。

―「ミュージシャンは音楽だけやってればいい。社会的なことや政治には口を出すな」と言うようなタイプの人もいますが。

ヴィクトリア:当然私たちだって何でもかんでも発言しているわけじゃない。自分の考えを人に押し付けるつもりもないわ。でも、基本的人権や表現の自由、あと他人を尊重するといったことは、当たり前のことだと思うのよね。意見が分かれる以前の問題。黙ってるわけにはいかないわ。どの政治家を応援しているとか、政治的見解を押し付けるようなことはしない。でも基本的人権や表現の自由に関わることだったら、誰が何と言おうと毅然とした態度を取らせてもらう。反対するような人は正直バカだと思ってるから。



―コーチェラではブリトニー・スピアーズの「Womanizer」とストゥージズの「I Wanna Be Your Dog」のカバーも印象的でした。今のマネスキンがカバーすることで時代もジャンルも違う楽曲に新しい意味が加わっているようにも感じましたが、カバーにあたってはどんなことを意識したのでしょうか?

ヴィクトリア:私たちにとってはごく自然な選曲だった。ストゥージズもブリトニーもどっちも大好きだから。カバーを選ぶ時はいつも楽しくて、大抵の場合、みんなで一緒に音楽を聴きながら、「ねえ、これ自分たちでやったら超ヤバいんじゃない?」って試してみる。あまり難しいことは考えず、楽しいからやってるの。私たちがカバーをやることを批判する人たちもいるけど、既に世に存在する曲に新しい色合いを加えることができるし、好きなアーティストの音楽を称えることにもなる。それってクールなことだと思う。この2曲に関しては、当然アプローチは全然違って、ブリトニーのほうは、自分たちのサウンドに寄せて、よりロックでアグレッシブな演奏を心がけた。ストゥージーズのほうは、イギーへのオマージュという思いを込めている。彼とは「I Wanna Be Your Slave」でコラボもしてるし、当然私たちは彼やストゥージズの音楽を聴いて育ったわけで、とにかく思い切り楽しんでカバーしたかった。



―いろんな声がかかっていると思いますが、バンドの美学として「これはしない」と決めていることは?

ダミアーノ:う〜ん、どうだろう。

ヴィクトリア:その時と場合によるんじゃないかしら。「絶対にしない」というものはないと思う。このバンドは柔軟だし、変なこだわりはない。肩の力が抜けてるの。よくバンドが「こんなのロックじゃない」「格好悪いからやらない」とか言ってるのを聞くけど、私たちはそんなこと気にしない。楽しんじゃえばいいと思ってる。

―ステージに立っていて一番嬉しい瞬間は?

ヴィクトリア:観客がライブを楽しんでくれているという熱気が伝わってきた時じゃないかな。曲を一緒に歌ってくれたり、飛び跳ねたりして、その熱気を感じた時。あとは、音楽に没頭して演奏を心から楽しめている時もそう。

―今夏のサマソニが初来日になります。併せて単独公演も開催されるそうですが、日本でのライブに向けてはどんな思いがありますか?

全員:凄くワクワクしているよ。楽しみだ!

ダミアーノ:日本に行くのは今回が初めてだから、全てに興味がある。いろいろ知りたいと思ってる。

ヴィクトリア:物凄く期待に胸を膨らませてる。日本のファンに初めて会えるのは凄く楽しみよ。サマソニの2回に加えて、単独ではもっとたくさん曲が演奏できるし、観客と近いところで演奏するわけだから絶対に盛り上がる、最高のライブになると思う。それに日本は街並みも文化もイタリアと全然違うし、いろんな人から「最高の場所だ」って聞いてるから、行くのが今から本当に待ちきれないわ。




マネスキン単独公演
2022年8月18日(木) 東京・豊洲PIT
OPEN 18:00/ START 19:00
チケット:¥7,500-(税込/All standing/1Drink別)
詳細:https://www.creativeman.co.jp/event/maneskin-ssextra/



SUMMER SONIC 2022
2022年8月20日(土)/ 21日(日)
千葉 ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ / 大阪 舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
※マネスキン出演:8月20日(土)東京会場 、21日(日)大阪会場
公式サイト:https://www.summersonic.com/



「SUPERMODEL」
購入・試聴:https://SonyMusicJapan.lnk.to/ManeskinSUPERMODEL

Translated by Yuriko Banno

 
 
 
 

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