幾何学模様が語る「有終の美」 世界が認めた日本発サイケ・ロックが生まれるまで

幾何学模様(Photo by Jamie Wdziekonski)

 

バンドの歩みと「架空の遊び場」

東京でも人口密度が特に高い、新宿区の街角で産声を上げた幾何学模様は、初期には高田馬場や高円寺の駅近くで路上ライブを行なっていた。Kurosawaはその理由について、チケットノルマをクリアできなかった場合は出演者が費用を負担するという、日本のライブハウスの一般的なシステムを避けるためだったと語っている。

また彼らは、ロカビリーやゴスロリなど日本ならではのスタイルを披露するコスプレーヤーたちの聖地、代々木公園でも演奏していた。幾何学模様の音源から伝わってくるサイケデリック・ミュージックへの並々ならぬ情熱は、ファンが漫画やスタイル、あるいは史実などに偏執的なこだわりを見せるオタク文化に通じるところがある。

「間違いないですね」とKurosawaは笑って話す。「オタクというよりマニアなんです。いいジャムをやるにはどうすればいいか、そればかり考えてる」



幾何学模様のサイケデリアへの傾倒は、サウンド面だけでなくスタイルにも現れている。GQは2018年に、60年代を思わせるファッションにこだわる彼らを「ここ10年間で最もおしゃれなバンド」と評した。実際、彼らの音楽にはファッション界からも熱い視線が注がれており、パリで行われたランウェイショーを彩ったり、最近ではグッチのキャンペーンにも起用された。

言うまでもなく、クラシックロックのファンが何時間にも及ぶことがある彼らのライブに足を運ぶ理由は、決してそのカラフルな衣装だけではない。彼らのショーの魅力の1つは、Kurosawaの弟のRyuによるシタールの音色とギターが生み出す滑らかなグルーヴを軸としたジャムだ。彼らはステージ上ではよりハードな一面を見せ、ギタリストたちが繰り出す唸りを上げるようなリフの数々は、オーディエンスをサマー・オブ・ラブと現代のモッシュピットの狭間にあるどこかへと連れ去る。

悶絶もののソロ、そしてメンバーのうち2人が確かな音楽的素養を持つという事実(Ryuはシタールについて学ぶためインドに留学し、Katsuradaは子供の頃から10年近くにわたってチェロを弾いていた)にも関わらず、Kurosawaは幾何学模様がテクニシャンの集まりだという見方を一蹴する。彼のドラム歴は10年程度に過ぎず、Katsuradaはここ1年ほどギターのレッスンを受けているという。Kurosawaは結成当初のジャムセッションについて、アンサンブルについて学びつつ、自分たちのサウンドを模索するプロセスだったとしている。その積み重ねは、今のバンドのアイデンティティとなっている。

「僕らは決して複雑なことをやっているわけではないんです。みんなで集まって音を出す、それがただ楽しくて。メンバー全員、本格的なバンド活動はこれが初めてだったんです」とKurosawaは話す。「バンドに入ったことはないけど、実は家でギターの練習をしている、そんな人々をインスパイアできればいいなと思っています」



ファンの目の前でジャムに没頭することの楽しさ、それは彼らが最後のツアーを行うことを決めた理由の1つだ。10月6日に行われるニューヨークのBrooklyn Steel公演で北米ツアーを締め括った後、バンドの最後のショーは東京で開催される。Kurosawaはツアーとアルバムについて、バンドの歩みを完結させるための最後のピースだとしている。

「これまでにリリースしたアルバムは、マサナ寺院や森のような庭園など、様々な場所を空想することで生まれてきました。島国で生まれ育った僕らにとって、それは音楽を介して作り上げた架空の遊び場のようなものでした」とKurosawaは話す。「クモヨっていうのは僕らのバンド名の一部であり、僕らのスタート地点である島の名前なんです。旅を終えて故郷に戻っていく、そういう感じですね」




幾何学模様
『クモヨ島』(Kumoyo Island)
2022年5月25日 国内盤CDリリース
数量限定Tシャツ・セットも同時発売
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12735

FUJI ROCK FESTIVAL ’22
2022年7月29日(金)、30日(土)、31日(日)新潟・湯沢 苗場スキー場
※幾何学模様は7月29日(金)に出演
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/

Translated by Masaaki Yoshida

 
 
 
 

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