アイドルから新時代のロックスターへ ハリー・スタイルズが追求してきた「自由な愉しさ」

 
音楽ファン目線と「自由に愉しむ」姿勢

ソロ大成の一因には、純粋な好意を示しつづけてくれたファンの存在があるかもしれない。実のところ、高評価された1stアルバムは「成功しなくてはならない」プレッシャーのもと作られた「安全策」でもあったという。そこからの脱出として、彼が行き着いたのが、業界ウケから距離を置く「音楽ファン目線の音楽制作」だ。

「自由」な「大作」を志した2nd『Fine Line』は、まさしく音楽ファンとしての純粋な好奇心がきらめくアルバムだった。曲中でヴァン・モリソンが言及されるように、70sロックのアティテュードを参照した、陶酔的なソウルタッチ・サウンド。これが、重圧と緊張が張り詰めたコロナ禍の世界に安心と享楽をもたらした。キャリア初のグラミー賞にも届いたロングヒットの評判はさまざまだが、なかでも、師匠と制作仲間の評は、ハリーが奏でる「自由」の魅力を物語っている。

「ハリーは、昨日の出来事かのように実体験を歌う」「物語をつくらず、真実を語っている。私と同じように。『Fine Line』は、彼にとっての(フリートウッド・マックの名盤)『Rumors』」――スティーヴィー・ニックス(Variety)

「(大ヒットした「Watermelon Sugar」は)素晴らしさが詰まった曲だけど、際立ってるのは歌詞だね。隠れようとも、気の利いたことを発しようともしていない。ただ、シンプルに、歓びに満ち溢れたスイカの曲。このことが成功の大部分を占める」――キッド・ハープーン(Variety)


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音楽性と表裏一体なファッションにも触れたほうがいいだろう。Vogue誌初の男性単独表紙でロングドレスを纏った彼は、ジェンダーレスな装いで知られるファッションアイコンだ。メンズ、ウィメンズの境界を超えるカリスマ性はデヴィッド・ボウイとも比較されている。

ただ、スウィートな礼儀正しさで知られるハリーの場合、反逆のアイコンというより、気に入ったものをただ「愉しむ」姿勢が特徴だろう。ある面では、彼の「自由な愉しさ」を追求する姿勢こそ、さまざまな指標やプレッシャーに満ちた今日求められる「ロックスター」像なのかもしれない。

 
 
 
 

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