ボブ・ディラン、世界を震撼させた『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』の革新性

ボブ・ディラン(Photo by Local World/REX/Shutterstock)

 
5月24日に81歳の誕生日を迎えたボブ・ディラン。彼のデビュー60周年を記念して、1963年の2ndアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』に続き、1965年の5th『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』が5月25日にアナログ・レコードで発売される。本作は全米チャート6位、全英1位を獲得し、売上は過去最高を記録。エレクトリックを導入して、フォーク・ロックというジャンルを確立した。このアルバムが世界に与えた衝撃とは?


1965年1月半ば、ボブ・ディランはコロムビア・レコードのAスタジオに入り、アルバム向けの11曲を3日間でレコーディングした。エレクトリックを初めて採用したアルバムでフォーク・ロックというジャンルを生み出したディランは、アコースティックの吟遊詩人から、ジャンルという境界線を超越したロックンローラーへと転身を遂げた。彼のパフォーマンスによって、従来のポップミュージックが発信してきた内容も、メッセージの伝え方も根底から覆されただろう。「俺のことを詩人だという人もいる」とディランは、ジャケットの裏表紙に書かれた散文詩の中で、控えめに表現している。ディランは自ら変身して時代に革命を起こし、詩人を自負する自分の限界へ挑戦する意欲に満ちていた。ジャケット写真に写った核シェルターの標識が、全てを物語っている。アルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』は、カルチャーの世界に落とされた核爆弾だ。



「アルバムで最も注目すべき点は、歌詞にある」と、デヴィッド・クロスビーは言う。「ボブ(・ディラン)の歌詞は、世界に衝撃を与えた。それまで“ウゥー、ベイビー”だの“アイラヴュー、ベイビー”なんて歌っていた世界の地図を、ボブが書き換えたのさ。彼の言葉選びは、本当に素晴らしかった。」

ディラン自身は自伝『Chronicles』の中で、「過去と訣別するために俺は、フォークミュージックにちょっとした変化と新たなイメージを加え、音楽への向き合い方を変えた。キャッチフレーズやメタファーに新たな言葉を組み合わせて、従来にないユニークな表現を生み出した」と語っている。

ラジオに流れるザ・ビートルズの楽曲「抱きしめたい」に衝撃を受けた1964年初頭あたりから、ディランはアーティストとしての新たな飛躍を思い描いていた。「ビートルズのやっていたことは、それまで誰も手をつけていなかった」と彼は振り返る。「コード進行がとにかく斬新で、さらにハーモニーが全てを支えていた。自分には、あんな音楽はできない」

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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