s-kenと高橋一(思い出野郎Aチーム)が語る、パンクを通過したダンスとレベルミュージック

ーニューアルバム『P.O.BOX 496』に収録されている「風の吹くままリバーサイド」の歌詞に、「泪橋」というワードが登場します。今日の対談は、三ノ輪や山谷の近くにある泪橋ホールで行っているわけですが、s-kenさんにとって縁のある場所なんでしょうか?

s-ken:今日写真を撮ってくれている上出優之利氏と5年くらい前に出会ったんですけど、彼は僕のようなジジイをライフワークで撮りたいみたいな、ちょっと珍しい人で。撮るんだったらもう数年もしたらなくなっちゃうだろう街を一緒に撮ろうかって話になって。最初はウエストサイドで撮っていたんだけど、だんだんイーストサイドが面白いと感じて、とくにこの界隈、隅田川のリバーサイド、京島、山谷から北千住を徘徊するようになったんです。NYから日本から戻った頃も、怖いもの知らずで、三ノ輪や山谷あたりで飲んでたりしたんだけどね。

高橋一:それは僕も本で読みました。リアルなパンクシーンを見た直後に東京戻って、そのへんで飲んでらしたというのは。

s-ken:70年代、海外特派員時代、入り浸ったNYパンクロックが生まれてきた場所が、バワリー街というスラムだったんですよ。CBGBっていうライヴハウスあった界隈ですが車を停めると浮浪者が出てきてフロントグラスを拭き小銭をねだるようなところで。一般人が怖くって近づかない場所で新しいムーブメントが起きていた。

高橋一:s-kenさんの音楽を聴いていて、圧倒的な現場感があるというか。僕が知識だけで知っている80年代の東京像じゃなくて、もっとリアルな音楽シーンとか、本当にアンダーグラウンドな路上の匂いを日本語で持ち込んで作品にしている感覚がある。今回の新作もそうで。2020年代、しかもコロナ禍の東京からそれが表れている。そこが一貫しているし、現代的でもある感じがしたんです。


s-ken(photo by 上出優之利)

s-ken:そういう意味では、「風の吹くままリバーサイド」は70年代中盤のニューヨークのバワリー街、それからソーホーのゲイディスコ、“パラダイスガレージ”、ヒップホップが生まれたサウスブロンクスクスのような、行くのが怖いぞ、だけどこの界隈から何か新しいストリートカルチャーがうごめいているという匂いにも通じている曲だと思う。山谷は異人のバックパーカーの街に変貌しつつあるし、今回、ライヴにDJで参加してくれことになったEGO-WRAPPIN’森雅樹君はいち早くこの界隈をホームベースして、野外イベントもプロデュースし始めています。僕がこのこの界隈を徘徊してるのを知って、コンタクトしてくれて、「風の吹くままリバーサイド」とうい曲が生まれたのは、思いがけない彼との再会も絡んでいたと思いますよ。

Rolling Stone Japan 編集部

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