練乳や人参ジュースも 自家製「粉ミルク」の危険性 米

数十年前に流行っていたからといって、安全だったとは限らない(Photo by Jerry Cooke/Getty Images)

全米各地で乳児用の粉ミルクが供給不足となるなか、自分の手で粉ミルクを作り、そのレシピをSNSに投稿する親が増えている。食品医薬品局と全米小児科学会では、自家製の粉ミルクは栄養バランスが偏っており、赤ちゃんに害を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らす。

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Carnation社の無糖練乳、Karo社のシロップ、乳児用ビタミン剤、蒸留水を混合するレシピの紹介動画は、TikTokで86万回も閲覧された。無糖練乳にコーンシロップを使った別のレシピ動画は12万回以上。この組み合わせはソーシャルネットワークでもとくに頻繁に見受けられる人気レシピのひとつで、大勢のユーザーが「近代的な粉ミルクが出回る前はそれを飲んで育った」「親がそれを飲んで育った」と主張している。

オースティンにあるテキサス大学デル医学部小児科のスティーヴ・エイブラムス教授も、たしかに粉ミルクが主流になる以前は練乳をつかったレシピで育った乳児が大勢いたことを認めているが、だからといって今も踏襲するべきだとは限らない。「そうしたレシピの大半も昔はたしかに良かったですが、今は十分とは言えません」と教授は言う。「なによりもまず、安全ではありません。50年代の赤ちゃんの多くがこれを飲んで育ったからといって、50年代の不適切なやり方に逆戻りして赤ちゃんを育てたいとは誰も思わないでしょう。お母さん世代やおばあちゃん世代、その上の世代がそれで育ったからといって、自分の子どもに通用するわけではありません」

最近エイブラムス教授は全米小児科学会のガイドラインを策定し、店頭で粉ミルクがまったく手に入らなくてやむを得ない場合は、生後6カ月以降の乳児に短期間牛乳を与えてもよいと親に指導している。「生後6カ月以上の乳児に牛乳を与えるのは理想的ではありませんが、赤ちゃんにアレルギーがなければ、大きな危険はありません。自家製の粉ミルクよりはましです」と教授は言う。「自家製の粉ミルクはいろいろなものを混ぜていますから、不純物が混ざる危険が出てきます。もっとも基本的な栄養が損なわれる危険もあります」。さらにエイブラムス教授は、未熟児用に新生児集中治療室にも母乳を提供している全米母乳バンク協会傘下の母乳バンクでは、母乳の寄付が増加しているとも付け加えた。場合によっては、殺菌した母乳を困っている親に提供するところもある。

Translated by Akiko Kato

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