ノラ・ジョーンズ独占取材 デビュー20周年、今こそ明かす『Come Away with Me』制作秘話

 
『Come Away with Me』がもたらしたもの

―ジェシー・ハリスら当時の自分のバンドでのファースト・セッション、クレイグ・ストリートを中心にしたセッションを経て、最後にアリフ・マーディンをプロデューサーに迎えたセッションが始まりました。アリフとのやり取りではどんなことが印象に残っていますか?

ノラ:実は最初、アリフと一緒に仕事することに躊躇していたの。でも彼は経験豊富で、何よりすごく優しかった。彼は私のバンドを起用してくれたし、エンジニアもファースト・セッションと同じ人(ジェイ・ニューランド)を使ってくれて、私たちは仲良くもなった。楽曲に関しても、もともとのデモ・テープと同じようにしたいという私の意見を考慮してくれた。それで、デモでやった曲のバージョンに、クレイグとやったうちの3曲に手を加えたものを足して、1stアルバムを完成させたの。

―最終的に『Come Away with Me』はオリジナル曲とカバー曲がいいバランスで収録されたアルバムになりましたが、数回のセッションで録音された膨大な曲のなかからどれを残すかは、あなたとアリフとブルースで相談して決めたんですか?

ノラ:えーっと、正直に言うとそれはよく覚えてないんだけど、確か最終段階で、各セッションごとのみんなのフェイバリット・ソングのリストみたいなものがあったと思う。最終決定されたリストに誰が導いたかは、覚えてないわ。今回改めて各セッションを聴き返してみて、デビューアルバムには残らなかったものの、今ではより好きになっている曲があることに気付いたりもしたの。



―『Come Away with Me』はジャケットのポートレートも美しくて、永遠性があるなと感じます。そのフォトセッションがどうだったかは、覚えていますか?

ノラ:よく覚えているわ。メイクアップ・アーティストがあまりに私の顔に盛りすぎて、その上、髪の毛もストレートに伸ばされて、自分じゃないみたいになっていた。半日くらいは我慢したけど、終わりのほうで「少しメイクを落としてもらえないかしら?」とお願いしたの。もう少しナチュラルなほうがいいと思ったから。だけど「目が赤くなるから、それはできない」と言われ、私は思わず泣いてしまったのね。いっぱいメイクされて、髪をストレートにすることに慣れていなかったから、混乱したんだと思う。そうしたらそのメイクさんが「わかったわかった、少し落とすから」って言ってやってくれたんだけど、私は泣き顔でグチャグチャな状態でね(笑)。最終的にいい写真に仕上げてもらえたから、ほっとしたんだけど。

―改めてお聞きします。あなたにとって、アルバム『Come Away with Me』とは?

ノラ:そういうふうには、考えたことがないの。ただひとつ言えることは、あのアルバムは私の人生を永遠に変えてくれた。そこに収録された曲はずっと生きていて、私のなかで今も進化し続けているということ。


『Come Away with Me』20周年記念配信ライブのアーカイブ

―さて、ようやくパンデミックも少し落ち着いてきて、ツアーを再開させるミュージシャンが増えてきました。今年の久々のツアーはどんなものになりそうですか?

ノラ:どんなものになるかはまだわからないけど、久しぶりのツアーが待ち遠しいわ。シチュエーションによっても変わってくるけど、楽しみにしているし、きっと楽しいものになると思う。

―ツアー以外に、今年計画していることは何かありますか?

ノラ:今年? 今年ももう半分終わろうとしているのよねえ(笑)。なんだか不思議な感じ。様子を見ないとわからないけど、常に新しい音楽に取り組んで、新しいことを試したりしているわ。

―次のアルバムのイメージなんかも、もうあったりするんですか?

ノラ:それはまだない。

―わかりました。またぜひ日本にも来てくださいね(※このインタビューは来日公演発表前に実施)。

ノラ:ええ。私も早く日本に行きたいし、早くみなさんに会いたいわ。

―ちなみに、初めてプロモーションで日本に来た2002年春の記憶はありますか?

ノラ:初めて訪れる国にしては、とてもいい印象で、楽しかったのを覚えている。あらゆる意味でアメリカと全然違うし、多くのいい人たちと会うことができたし。あなたたちのような人にね! あれからもう20年も経つのね……。私もまだ若かったし、「一体何が起きているの?」というような感じだったけど(笑)、日本のいろんな美味しいものを食べることもできて、とても楽しかったわ。

―では最後の質問です。1stアルバムが発売されたのはアメリカで9・11同時多発テロが起きた翌年であり、心に傷を負った人、悲しみに暮れた多くの人たちを癒すことになりました。それから20年が経ち、現在はロシアによるウクライナ侵攻が続いている。このような大変な時代に『Come Away with Me』がリイシューされることについて、何か意味のようなものを感じたりはしますか?

ノラ:私の音楽がそういったことに対してどれだけ影響があるのかないのか、私にはわからないし、コメントできない。ただ、激動の時代だと実感するし、戦争は強烈で、恐ろしいこと。全ての人々が癒しを必要としていて、音楽にはなんらかの形で癒しの作用があるのも確かだと思う。どんな音楽にもね。その音楽の一部でいられることを、私は嬉しく思っている。




ノラ・ジョーンズ
『Come Away with Me』(邦題:ノラ・ジョーンズ)
スーパー・デラックス・エディション:5月27日リリース
通常盤(SACD):発売中
通常盤(SHM-CD):発売中
視聴・購入:https://NorahJones.lnk.to/SuperDeluxeEditionPR

ノラ・ジョーンズ ジャパン・ツアー2022
10月11日(火)札幌文化芸術劇場hitaru
10月13日(木)ゼビオアリーナ仙台
10月14日(金)、16日(日)、18日(火)日本武道館
10月17日(月)大阪城ホール
来日公演特設サイト:https://udo.jp/concert/NorahJones2022

ノラ・ジョーンズ日本公式サイト:https://norahjones.jp/

Translated by Hitomi Watase

 
 
 
 

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