DOPING PANDAが再結成ツアー完走 10年を経て奏でた音「今日の終わりは、始まり」

後半が曲間なしのノンストップな分、前半とアンコールでのMCの時間は、ゆったりめに取られていた。「頭4曲を立て続けにプレイしてから、再結成を発表したら、思った以上に反響が大きくて、みんなの期待に応えられるか、自分たちが間違ったものを見せることにならないかと怖かった」と、Furukawaは語る。
「怖くて、ライブで曲を1曲も思い出せない夢を見た」という話をしてから、「……いや、嘘ついちゃダメだ」と撤回。話を盛りそうになったと申告し、「怖いからMCまで全部決めてやろうかと思ったけど、そんなことをしようとしてるから10年前に行き詰まったんだ、と気づいた」と反省。「俺がダメでもタロティがいる、タロティがダメでもHayatoがいる。もうありのままにやりますよ、せっかくバンドなんだから。今日は世界一幸せな再結成をしているDOPING PANDAを、最後まで楽しんで帰ってください」と挨拶し、拍手を浴びる。

で、そこからまた4曲を経てのMC。「さっき、俺がダメでもタロティがいる、タロティがダメでもHayatoがいる、って言ったけど、ヤバい。今日、3人ともヤバい。3人とも最高なんで、最高のDOPING PANDAを最後まで楽しめますよ」と、手応えを言葉にし、また拍手を浴びた。


Photo by Rui Hashimoto

中盤のMCでは、フルカワから念願のフジロック・フェスティバル’22に出演が決まったことを報告。1997年、19歳の時にタロティたちサークル仲間と行った第一回フジロックの衝撃や、2002年にDOPING PANDAで「ROOKIE A GO-GO」に出演した時の思い出にも触れる。

「10年前は、このままやっていて、いつ立ち止まっちゃうんだろうか、どこまで行けるんだろうか、不安でいっぱいだったんだけど、今はどこまででも行けそうな、そんな気がしています」というMCから「Go the Distance」を聴かせ、「YA YA」から「∞DANCE TIME」へ突入。
16曲目の「Hi-Fi」ではFurukawa、ハンドマイクでお立ち台に上がり、「俺たち、もっと行くぜ!」と宣言。19 曲目「transiwent happiness」では、「もっと行けるだろ? もっと行こうぜ!」とオーディエンスをあおった上で、「連れて行ってやるよ!」と叫び、曲の最後に「愛してるぜ、ドーパメイニア」と足した。

>>関連記事:フルカワユタカの挫折と仲間との出会い、ソロ活動7年間を振り返る

解散した後にDOPING PANDAを知って、今日初めてライブを観た、という人は、この人たち、曲に入るとすさまじい音を出すのに、なんでMCになるとこういう感じなんだろう? と、不思議に感じたかもしれない。ただ、デビューから解散までのDOPING PANDAの、そして解散から現在までのソロ・アーティストYutaka Furukawaの、悪戦苦闘の歴史を知っているファンには、今、そんなライブをやっている3人の気持ちが、手に取るようにわかったのではないか。

うまくいったこともあったし、勝ち得たものもあったが、いろんな失敗もしたし、誤った選択もしたし、後で「あれはよくなかった」と気がつくような言動もあった。そんないろいろの末に、バンドが行き詰まって、終わらせざるを得なくなった。Hayato Beatはマネージャー業に転職し、タロティは人前に立つことをやめ、ミュージシャンとしての道を選んだのはFurukawaだけだった、という事実が、「いつかまたやれたら」みたいな解散ではなかったことを示している。


Photo by Rui Hashimoto

そして10年が経ち、さまざまな偶然や幸運が重なって、こうしてリユニオンすることになった。だったら、過去にした失敗や過ちはすべて改善しよう、同じ轍は踏まない、今度こそ最短距離でトップまで駆け上がってやる──というほど、力んだことは考えてないと思う、3人とも。

ただ、一度バンドを失って、さまざまな経験をしながら「バンドのメンバーではない自分」として生きたことによって、いろんなことが見えた。バンドというものの楽しさも、魅力も、大変さも、ままならなさも、いかんともしがたさも、そして、かけがえのなさも、改めてよくわかった。

その上で、どうせもう一度バンドをやるなら、せっかくだから、その「よくわかったこと」を生かしたい。で、バンドというものがいかに大事でかけがえのないものかがわかったんだから、そういう気持ちで取り組みたい。ということなのではないかと思う。

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