ジョニー・デップも悪友、ポーグスの酔いどれ詩人が歩んだ愛すべき人生

(C)The Gift Film Limited 2020

ザ・ポーグス(The Pogues)のフロントマン、シェイン・マガウアンのドキュメンタリー映画『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』が6月3日(金)から全国順次公開。本作の見どころを荒野政寿(「クロスビート」元編集長/シンコーミュージック書籍編集部)に解説してもらった。

ポーグスのシェイン・マガウアンを題材とするドキュメンタリーは、『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』が初めてではない。2001年に制作された『shane[シェイン] THE POGUES:堕ちた天使の詩』という1時間半ほどの作品でキャリアを一旦総括しているが、その時点でシェインの体調はすでにボロボロ。往時のような創作意欲を期待するのは、もう難しいのでは…と思わずにいられない、酔いどれ詩人の姿がそこにあった。

あれから20年近くを経て新たに制作された『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』は、話題が『shane[シェイン]』と重なる部分も多いが、主人公の新旧発言を入念にリサーチしてミックス。アニメーションや、数々の映画からの引用(ポーグスが出演したアレックス・コックス監督の『ストレート・トゥ・ヘル』を含む)も盛り込んで賑やかなエンターテインメント作品に仕上げている。後味が決して良いとは言えない『shane[シェイン]』を観て考え込んでしまったファンも、新鮮な気分で楽しめるはずだ。



監督はジュリアン・テンプル。数々のミュージック・ビデオを手掛ける一方、セックス・ピストルズの『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』(1980年)、『ロンドン・コーリング ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー』(2007年)、ドクター・フィールグッドの『オイル・シティ・コンフィデンシャル』(2009年)など、優秀かつ刺激的な内容の音楽ドキュメンタリーを撮ってきたテンプルらしく、パンク前夜の70年代前半~パンク・ロック~ポストパンクという時代の変化を描きながら、シェインが歩んできた道のりをわかりやすく伝えている。この丁寧さが、『shane[シェイン]』にはやや欠けていた。

また、本作の製作をシェインのソロ曲「That Woman’s Got Me Drinkin」のビデオにも出演していた悪友、ジョニー・デップが務めた点も話題。複数のインタビュアーが登場する本作で、デップは主に与太話を担当、狂言回し的な役割を果たしているように見える。『パイレーツ・オブ・カリビアン』をネタにしたシェインとの軽いやり取りも気が利いていて面白い(シェインのデップを評したコメントは「甘ったるい顔したお砂糖野郎」)。


RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE