米体操の性的虐待事件、被害者が「お粗末な捜査」と批判するFBIの闇

ナサール被告以外は誰も責任を問われていない

「ラリー・ナサールは刑務所に送られましたが、他には誰も責任を追及されていません」とクライン弁護士は述べた。「いまだに大きな疑問が残っています――(昨年秋の)上院司法委員会の公聴会の時からの疑問です――アメリカ合衆国のメリック・ガーランド司法長官はどこで何をしているんです? なぜ隠れてばかりで、上院や大衆の質問や、2015年以降虐待を受けなくてもよかったはずの犠牲者の質問に答えようとしないんですか? なぜFBIの犯罪者を起訴しないんですか?」

ローリングストーン誌は司法省にコメントを求めた。司法省はFBI捜査官の訴追見送り決定を発表した先月の声明で、「元捜査官の捜査で集められた証拠を入念に検証・分析し、ベテラン検察官の勧告をふまえた上で」こうした結論に達したと述べた。

今回の提訴の前にも、13人の別の被害者が4月に同様の訴訟を起こしている。「不法行為に基づく損害賠償請求法」に基づいて提訴されたこれらの訴訟は、連邦政府機関の訴訟にむけた重要な足がかりだ。FBIには提訴から対応まで6カ月の猶予が与えられている。「こうした訴訟を起こすことで、私たちは声を大にして主張しました。法執行機関が子どもを加害者に差し出したことに対しておとがめなしというのは決して受け入れられない、と」とクライン弁護士も言う。「当局が責任を取るのを待っている余裕はありません」

クライン弁護士は元体操選手で、幼少時代に10年間ナサール被告から虐待を受け、「仲間の被害者」を救うために弁護士になった。同弁護士は責任追及には刑事訴追も含まれるべきだと考えている。「(責任追及に)ふさわしいのは起訴です」と彼女は言う。「メリック・ガーランド長官も関わっているようですが、今後審理が行われれば、何を知っていて、どうしてこういうことになったのかがわかるでしょう。被害者が前に進めるようにするためにも、彼女たちに真実を教え、大人たちの責任を追及してください。オオカミを野に放った人間が責任を問われるまで、癒しのプロセスは始まらないのです」

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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