クーラ・シェイカー伝説を辿る ブリットポップ異端児の新章とサマソニ来日の展望

クーラ・シェイカー

 
クーラ・シェイカーが6年ぶり最新アルバム『1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs』を6月15日に日本盤リリース。8月にはサマーソニック出演も決定。クリスピアン・ミルズ率いるバンドの歩みと最新モードを、荒野政寿(「クロスビート」元編集長/シンコーミュージック書籍編集部)に解説してもらった。

miletからクーラ・シェイカー新作へのコメント到着、記事の末尾に掲載。

ブリットポップの時代を象徴する“ブラーVSオアシス”が盛り上がったのは1995年のこと。その余韻が続く中、ゲームチェンジャー的に忽然とUKロック・シーンに出現したのがクーラ・シェイカーだった。1996年のデビュー・アルバム『K』からは、「Grateful When You’re Dead」(35位)を皮切りに、「Tattva」(4位)、「Hey Dude」(2位)、「Govinda」(7位)と、全英シングル・チャート上位にランクインするヒットを連発。アルバムも全英1位を獲得し、ダブル・プラチナムを記録するベストセラーとなった。

制作陣にストーン・ローゼズの1stアルバムと同じジョン・レッキーを迎えて臨んだ『K』では、フロントマンであるクリスピアン・ミルズの嗜好をダイレクトに反映し、“1967年のロック”とインドへの憧憬を隠さない現代版サイケデリック・ロックを展開。しかしその直球なアプローチと、有名女優の息子というクリスピアンの出自、中産階級出身のバンドであったことが英国のシニカルな音楽メディアから嫌われる要因となり、急速な成功と同時に批判の洗礼も受けている。クラシック・ロックの影響を昇華する上で、わかりやすいサムシング・ニューの付加が求められ続けた90年代のUKロック・シーンにおいて、ジョー・サウス作の「Hush」を初期ディープ・パープルのヴァージョンをなぞったアレンジでカバーする彼らの姿勢が、あまりにも異質だったのは確かだ。しかし、その「Hush」(1997年)もUKシングル・チャートで2位まで上昇。賛否渦巻く中で、大衆からは絶大な支持を得ていく。プロディジーの『The Fat Of The Land』に収録された「Narayan」にクリスピアンが客演して話題になったのもこの頃だ。




先行シングル「Sound Of Drums」(1998年:全英3位)が予感させた通り、2ndアルバム『Peasants, Pigs & Astronauts』(1999年)では前作のハードさと疾走感が弱まり、サイケ・ポップ色がますます濃厚に。制作の初期段階でジョン・レッキーが離脱、続いてジョージ・ドラクリアスとリック・ルービンにプロデュースを依頼するも相性が悪く、結果的に名匠ボブ・エズリンを迎えてようやく完成に漕ぎ着けた多難なアルバムだった。フォーキーで内省的な曲も含む、表現の深化を示した粒ぞろいの力作だったが、シングル・カットされた「Mystical Machine Gun」「Shower Your Love」はいずれも全英14位止まりと苦戦。アルバムも9位までしか上がらず、前作を大きく下回るセールスにとどまった。そしてこの年の9月、バンドは解散を発表する。



その後、クリスピアン・ミルズはリリースされずに終わったソロ・アルバムの制作を経て、元ストローのメンバーと新たにザ・ジーヴァズを結成。クーラ・シェイカー登場時のグルーヴ感を彷彿させる痛快なロックンロールを鳴らした『1,2,3,4』(2002年)、『Cowboys And Indians』(2003年)は、本国では苦戦するも、日本のファンには歓迎された。

再びクーラ・シェイカーが動き始めたのは2004年のこと。ライブ活動を再開、2006年にEP『Revenge Of The King』を出すタイミングで出演したフジロックでは入場規制がかかるほどの盛り上がりを見せ、ファンの期待を裏切らない出し惜しみ無しの名曲オンパレードで圧倒してくれた。

3枚目のアルバム『Strangefolk』を2007年に発表(全英69位)。制作陣にチャド・ブレイクを迎えて心機一転を図った本作リリース後、バンドはセルフ・プロデュースで4枚目の『Pilgrim’s Progress』(全英117位)に取り掛かるが、契約上の問題で制作が中断してしまう。このアルバムがようやく世に出たのは2010年だった。同作リリース後のツアーでは再び来日も果たし、フジロックのグリーンステージに登場、大舞台に相応しい熱演で健在ぶりを示した。

その後クリスピアンが映像プロジェクトへの集中を宣言、バンドしての活動は停滞を余儀なくされる。2016年に通算5枚目、『K2.0』をリリースすると全英アルバム・チャートで32位まで上昇、久々のトップ40入りを果たした。この年もフジロックに出演、アンコールに応じて披露した「Hey Dude」で爆発的な盛り上がりを見せ、日本での根強い人気を再確認させてくれた。


『K2.0』のシングル曲「Infinite Sun」

 
 
 
 

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