moonridersが持つ徹底的な民主主義性、鈴木慶一らと新アルバムを全曲語る



田家:アルバムの9曲目です。「世間にやな音がしないか」。いろいろなことが隠されているようなタイトルでもありますが……。

鈴木:いろいろなタイトルがあるなー本当に。

田家:詞が慶一さんで曲が夏秋さんです。

鈴木:夏秋くんから歌詞を書いてと最初に頼まれまして、私は人に書くとき結構無責任で過激なことを書くんです。

佐藤:このアルバムで1番やばい歌詞だなと思いました。

鈴木:嫌な音ってたくさんあると思うんです。勝手に入ってくるニュースとか、SNSとか。そこからさらに掘っていくと、違うものにぶつかってしまう。そういったことを含めてですね。もちろん耳鳴りも。

田家:0点の答案用紙と札束という、社会的な批評性ですね。

鈴木:まあ、それが政治だと言い切っちゃおうと。

佐藤:いやーかっこいいです。慶一さんってずっと政治的なワードを使わずに政治を歌ってきたじゃないですか。ここで自分の中のルールを1個破ったのかなと思って。

鈴木:その通り。「政治」と歌っている歌詞は生まれてはじめてですね。

佐藤:そこに感動しちゃって。

鈴木:この曲調で最後終わって転調するとビートが4拍子になるところ、何か決めるにはこれかなと思ったんですよね。

田家:それをもう使っちゃえと。

鈴木:そう、使っちゃえって。それ以外言いようがない。歌詞を作っている途中で結論これ! って。

田家:これはかしぶちさんのドラムが使われている?

鈴木:3拍子のワルツから4拍子になるところでかしぶちくんのドラムの音を、夏秋くんが持っていて編集しています。

田家:クレジット見ていて、かしぶちズドラムループスって書いてあったので、これを見て武川さんのトランペットがちょっと違って聴こえました。

鈴木:あ、そうですか! あれはサンプリングなんですよ。2011年に『Ciao!』というアルバムがありまして、それにかしぶちが書いた「ラスト・ファンファーレ」。そのファンファーレのライブバージョン部分を抜いて貼り付けたんです。タイミングはいろいろ考えて、テンポも違うので。だから、かしぶちに対するトリビュートというか、オマージュがドラムズと一緒にファンファーレとして出てくればいいかなと。遡りますけども、「岸辺のダンス」の中にも武川が急に過去のかしぶちくんのフレーズを引き出したんですね。

佐藤:あー、モロンズランドの。

田家:おーさすが!

鈴木:その通り。

佐藤:思い出しますよね。あのフレーズ。曲調もですけど。

鈴木:「あれ? これ入れちゃっていいのかな」と思ったけど、入れた方がオマージュとしていいなって。

田家:あのアルバムのあの曲のあのフレーズって言われて、優介さんたちはすぐにパッと浮かぶんですね。

佐藤:染み付いているので、もう。

鈴木:そのへんも脅かしてやろうと思ってはめたりして、気づくかなあって。

田家:そうやって考えると、この曲はお2人にとっても特別な意味を持った曲になったんじゃないですか?

澤部:ましてや夏秋さんの曲ですからね。

鈴木:夏秋くんの曲がmoonridersのアルバムに入るのは初めてですからね。あとはコーラスがちょっと若々しく聴こえるんです。

田家:こんなに明るいんだっていうのはそれかもしれませんね。

鈴木:それがすごく大きなこのアルバムの特徴です。moonridersの持っているコーラスワークはユニゾンで歌ったりするような、そしてビブラートがかかる感じ、今回はそうじゃないんです。

Rolling Stone Japan 編集部

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