moonridersが持つ徹底的な民主主義性、鈴木慶一らと新アルバムを全曲語る



田家:11曲目の「Smile」です。詞曲が博文さんでとてもシンプルです。

鈴木:うん、3拍子のね。これはGHQがって話をしましたよね。ハイクオリティな方々が最初に選んだ曲のうちの1つですね。この「Smile」と「S.A.D.」が選ばれた。この2曲選ぶっていうのでみんな結構びっくりした。

田家:1番意外な曲っていう感じがありますもんね。

鈴木:白井は「これは選ばれると思ってたなぁ」なんて言ってましたけども。イントロダクションはなくて、曲から始まっていたんです。イントロダクションは後でつけようというアイデアがありまして、そこに怪しげなものが入っていて。私事で申し訳ないのですが、コンピューターが壊れてしまいまして、テストランニングでこのMIDIデータで、鳴らしたい音源は音を出すかって、適当にプーってひいたやつ。いいからこのまま使っちゃおうという、偶然は本当に勝利する(笑)。

田家:でも、とても肯定的で爽やかな曲のようにも聴けるんですけども、そうじゃないところがいっぱいある要素の1つですね。

鈴木:本当にそうなんです。〈やりきれない 気持ちは 墓場まで持ってゆこう〉とかね。

田家:そう。諦めきれないこともやりきれない気持ちもあるわけですからね。

鈴木:最初、私も騙されましたもん。〈smile smile smile〉って、今ニコニコしていていいのかなと思って。で、〈dream dream dream〉。夢を語るやつは私信用しませんから(笑)。

田家:それぞれの方がご自分の意思、イメージで曲をお書きになってきてる。慶一さんの方でこんな曲を書いてほしいという要望はないんですね。

鈴木:ないです。自由にみんな書いてきたので選ぶのが大変だから、今回はGHQのお二人に選んでもらいましたけど。デモテープは壊すためにあるんです。それをそのままやるんだったら、所謂民主主義ではないので、専制君主主義だからね。この通り弾いてっていうのはないんですよ。

田家:徹底した民主主義バンド。そういうバンドの在り方はずっと変わらないってことですね。

鈴木:昔からそうですね。今度はさらにそれが進んで、デモテープをぶち壊していく。それをどうするかだよね。いいねってすぐ思えるかどうか。否定されているのかなって思うことはまずない。

佐藤:現場で出てくるアイデアが重要ですよね。

鈴木:です。ライブのリハーサルも2人とも体験しているでしょうけど、どんどん変わっていく。

澤部:どんどんアイデアが出るし、すごいですよ。

田家:徹底した民主主義と徹底したクリエイティビティってことですね。

鈴木:スクラップ・アンド・ビルド。

田家:お2人にとって歳をとるってどういうふうに感じているんですか?

澤部:昔よくザ・バンドを聴いて、慶一さんが「早く老人になりたい」とおっしゃっていたのは自分の中で年齢みたいなものを考えるとき、1つの指針になる言葉ではあるんですよね。歳をとって自分がどんな音楽を作るのか楽しみになりました。

田家:moonridersは老いることを楽しんでいるバンドになるんですかね。

鈴木:楽しんでますけど、彼ら2人を見ていて怖いときありますよ(笑)。なぜかと言うと、彼らが60歳になったとき、我々はいないんだ。「Smile」って、笑いながらの即身仏みたいな感じでしょ。

澤部:すごいこと言いますねー。

鈴木:諦めと生きようとすること、死ぬことが全て同居しているのを今、感じました。というようにこのアルバムは何度も聴くと、いろいろなことが見えてくる。音的にもいろいろな音が出たり入ったりしている。ヘッドホンで聴いていると、こんな音してたんだって今思いました。

田家:家で聴いてるのと全然違って聴こえてます(笑)。

鈴木:そうなんだよね。エンジニアの福原さんもいろいろ工夫して、楽器や声が出たり入ったりしてくれっていうことに応じてくれたんです。

Rolling Stone Japan 編集部

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