Haruyが語る、HSU(Suchmos)と交わした会話

「季語は使わないほうがいい」

―「Lovely」のミュージックビデオを、Suchmosの初期からMVやVJを手がけてきた山田健人さん(通称ダッチ)と一緒に作ったのは、どういう経緯だったんですか?

Haruy:「撮りたい」と言ってくれていたのもありますし、隼太さんと長い付き合いの方に隼太さんが作った曲のMVを監督してもらうのがいいんじゃないかと思って。撮影スタッフもSuchmos時代の方たちが集まってくださって。

プロデューサー・金子悟:最後に山田くんが(Suchmosで)やってくれたのが『LIVE WIRE』の生配信ライブで、そのときの照明とか道具の方を集めてくれていたんです。僕らも現場に入ってそれを知ったんですけど。

Haruy:現場でみんながこうやってくれている(両手を広げて迎え入れてくれている)感じがしました。「よしよし」ってしてくれている感じがあったかもしれないです。

―まさにLoveですね。めちゃくちゃ尊い映像作品ができましたね。

Haruy:そうですね、本当に。宇宙展望台のシーンはすごく好きで。スタジオで撮ったほうは、なんか自分じゃないみたいな感覚がまだあって(笑)。「東京」「都会」「夜」みたいなイメージになっていて、ダッチさんにはそう映っていたのかって。自分としてはあまり二面性とかはなくて、素の気持ちだけで書いていたので、大人っぽい部分を汲み取ってもらえたんだなと思いました。



―色々貴重な話を聞かせてもらってきましたが、このEPの制作を通して、隼太さんから学んだこととは?……といっても、いっぱいあると思うんですけど。

Haruy:いっぱいありますね……もう、すべてだと思います。

―そうですよね。噛み砕いて聞くと、音楽の作り方においてはどうですか?

Haruy:歌詞については、技術面でプロデュースしていただいて本当に勉強になりました。Tastyのときは英詞だったので日本語で書くのが初めてで。基本を備えてもらった感覚があります。「ここは韻を踏んだほうがいい」とか「季語は使わないほうがいい」とか。

—隼太さん、季語を使わないことを大切にされていたんですね。面白い。

Haruy:そうなんですよ。なるべく季節問わず聴いてもらいたいということで。最初「Lovely」は夏っぽい歌詞で、「海」とか夏の要素をいっぱい入れていたんですけど、「それじゃないのにしよう」って言われたりしました。それ以外だと、「自分の思ってることを書いたほうがいい」というふうに言ってくれて。「Lovely」とかも、「いつか恥ずかしくなるかもしれないけど、でも今しか書けないからいいと思うよ」って。歌うときも、歌詞を書くときも、無理しないで「そのままでいい」みたいなことを言ってくれていました。私の声は、無理してない感じで揺れているようなところがいいから、そこにフォーカスしようって。私は自分と対極的な歌い方の人に憧れるし、そういう気持ちも隼太さんが「わかるけど」と言っていて、でも私には私にしかないものがあるからそれを突き進めたらいいというふうに言ってくれて。味方でいてくれる感覚がすごくありました。

―音楽では嘘をつきたくないって、これまでSuchmosを取材してきたなかでYONCEさんも言っていた言葉だなと今お話を聞きながら思いました。

Haruy:そうなんですね。「売れたい?」「チャートに入りたい?」とか隼太さんに聞かれたこともあって。「いいと思う曲ってどういう曲?」みたいな話とか。いいか悪いかは、有名とか無名とかまじで関係ないと。チャートに入ってようがなかろうがいい曲はいいから。売れてるから聴かないっていうのが自分のなかでちょっとあったんですけど、よくないなと思いました。ビリー・アイリッシュの話をしたことがあって。「全然聴いてなかったけど聴いてみたらめっちゃいい」みたいなことを隼太さんが言っていて、それで私も聴いてみたら「確かに、めっちゃかっこいい!」みたいな(笑)。隼太さんと制作していて、どんな音楽も全部一律で聴くほうがいいよね、という話をしました。

—「チャートに入りたい?」という話をされたとき、Haruyさんは何て答えたんですか?

Haruy:1位を狙いたいわけではないけど、いろんな人に聴いてもらえたらいいなって。自分の作った曲をみんなに聴いてもらえることとか、フィードバックが返ってくることは、やっぱりすごく嬉しいし楽しいから。そうなれるのはチャートに上がってくるということだから、そういう意味で聴いてもらえるのは嬉しいことだなという話をしました。

—どんなことを学んだかをまた違う角度から聞くと、アーティストとして、もしくは人としての生き方や、もしくは他者との接し方などではどうですか?

Haruy:プロとして音楽を仕事にするというのはどういうことなのかを話してくれましたね。私は、最初のほうは「本当にやるかわかんない」くらいの感じで……。

―就職するかもしれないと思ってたんですもんね。

Haruy:そう、定まってなくて。そこに対して「どっちでもいいと思う」って。「音楽をやるんだったら大変なこともいっぱいあるし、でも音楽じゃなくても仕事は大変なことが絶対にある」と。ご自身がアーティストだからというのもあると思うけど、特に音楽って、すごく孤独で難しい職業でもあると思うって言ってましたね。でも私には「その声を生かして音楽で食べていけたらいいよね」と言ってくれてました。生き方……生きることってどういうことなのか、ということも亡くなってからすごく考えましたし。そこもある意味学んだと思いますね。

―そうですよね。

Haruy:接し方は、本当に隼太さんは誰に対してもフランクで。しかも、上手に接し分けている感じもして。「Snake」のレコーディングは全部生演奏でやってもらったんですけど、みなさん音大出身の方々なので(江﨑文武、澤村一平、澤近立景)、私だけ音楽用語とか技術的な部分がわからないときがあって。そのたびに隼太さんがわかりやすく言い直してくれたりして。フェアに見ているというか、みんなを同じ土台に立たせてくれている感じがしました。

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