SNS発の新たな陰謀論「パンダは実在しない」米

Photo by Vincent Thian/AP

インターネットカルチャーで以前から存在するのが「パンダは実在しない」説。アメリカの掲示板型ソーシャルニュースサイト「Reddit」では、2015年に「パンダは非常に手の込んだデマに過ぎないと確信をもって言える」という見出しの投稿が反響を呼んだ。

【写真】水遊びするパンダたち

他にもパンダの奇妙な事実――肉食動物なのにほとんど笹しか食べないとか、捕獲された状態では交尾を拒むなど――を例に挙げ、動物としての生存は不可能だと思われる点を強調する人々もいる。

さらに事をややこしくしているのが、動物園が偽パンダをでっちあげたという事件が記録に残っていることだ。例えば1980年代後半には、台湾のある動物園がマレーグマを白黒に染めてパンダとして売り込んでいたことが発覚、という報道があった。また2014年にはイタリアのサーカス団が子犬を白黒に染めて、パンダとしてごり押ししようとしたことが発覚している。明らかにこうした事件が疑念を煽り、「パンダは実在しない」と信じ込ませている。

@that_pearl_witch Reply to @thesunny.witch just my thoughts…maybe I’m wrong. But a lot of things that make you go hmmm #theravenoflight #pandasarentreal #conspirancy Steven Universe - L.Dre


「パンダは実在するのか」をめぐるこうした議論の大半は、ある程度は眉唾ものだ。ある意味、「鳥は実在しない」というミームと似ている部分もある。昨年TikTokで拡散したこのミームは、実は空を飛ぶ鳥はアメリカ政府が民間人を監視するために製作したドローンだ、と主張するものだった。ニューヨークタイムズ紙も報じているように、このミームはなんとなく生まれた内輪うけのネタが、似たような偽情報のパロディへと進化し、ネット上の偽情報撲滅の手段としてクリエイターに祭り上げられたものだった。

それでも「パンダは実在するのか」といった議論の一部は、残念ながら薄暗い陰謀論の領域に矛先を変えている。21万8000件のいいねを獲得したある動画では、パンダが中国の史料に記録されていないことを理由に、パンダは実在しないと力説している(実際これは正しくない。パンダの目撃情報は古代中国の史料にも記録されているし、博物研究家のジョージ・シャラー氏によれば、紀元前3世紀には秦王朝の医学誌が生理痛対策としてパンダの毛皮を勧めている)。さらに動画のクリエイターは、「国際エリート集団が人身売買と児童の性的虐待を行っている」という根拠のないQアノン陰謀論がらみのミームと自説を結び付けている。一見無害な陰謀論が、より深い闇にいとも簡単に落ちていくことがあらためて証明された形だ。

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From Rolling Stone US


Translated by Akiko Kato

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