コナン・グレイ「まともなデートをしたことがない」Z世代スターが自分を曝け出す理由

コナン・グレイ(Photo by Justin J Wee for Rolling Stone)

 
大ヒットしたデビュー作『Kid Krow』から2年、待望の2ndアルバム『Superache』をリリースしたコナン・グレイ。日本人の母親を持ち、7月15日(金)に日本初ショーケース・ライブの開催も決定。米ローリングストーン誌によるインタビューで、ポップスターの素顔に迫る。

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悲惨だった幼少期

コナン・グレイによると、彼は常に物事を側から眺めているようなタイプだったという。周囲の人間に起きた出来事を実体験のように捉える彼は、自分のことを「傍観者」と表現する。「いつも人間観察をしてるんだ」。ロサンゼルスのEagle Rockエリアにあるお気に入りのカフェで低温抽出のコーヒー(ミルクも砂糖もなし)をすすりながら、彼は肩をすくめてそう話す。「僕はただ、誰かの日常を観察するのが好きなんだと思う」

現在23歳の彼が、自分を「傍観者」と表現することはやや不可解に思える。彼はプラチナディスクの記録を持つポップスターであり、コーチェラのメインステージに立ち、デリケートでジェンダーフルイドなファッションセンスが反映されたValentinoの天使を思わせる衣装に身を包んで、メットガラのレッドカーペットを歩いたのだから。

しかし、着古されたベースボールTシャツの上に黒のボンバージャケットを羽織り、カーリーな髪が目にかからないよう黒のサングラスで押しとどめている今日の彼と話していると、コナンが自分をそう形容する理由がわかった気がした。もしかするとそれは、テキサスの田舎町という何をするにおいてもハンデとなりかねない環境で幼少時代を過ごした、テイラー・スウィフトが大好きな日系アメリカ人の彼が患うインポスター症候群と関係しているのかもしれない。あるいは、パンデミックの間に確固たる人気を確立したが(デビューアルバム『Kid Crow』がリリースされたのは2020年3月)、その恩恵に預かることなく「ベッドの上でゴロゴロするだけ」の日々を過ごしたからかもしれない。



だが今年、さらに大きな注目を集めることになるだろう彼が、ベッドの上で無為に時間を過ごすことはないだろう。彼のソングライティングの特徴は、残酷なほどの誠実さと、あらゆることを考え過ぎる若者世代に特有の視点だ。しかし『Kid Crow』は、未熟な愛に翻弄されながらも前に進もうとする、ナイーブな一般的な少年像を描いているに過ぎなかった(数カ月前まで、彼は「まともにデートしたことがなかった」という)。ニューアルバム『Superache』では、彼の内面がより深く掘り下げられている。失恋の経験、悲しみに打ちひしがれたその後の数カ月間、そして幼少期の体験がかつてなくストレートに描かれている。「このアルバムを作っていた時、僕はずっと惨めな気分だった。だからこのアルバムは、僕の人生をものすごくリアルに描写しているんだ」と彼は話す。「わずかに残されていた身の部分を、骨から剥ぎ取ろうとするかのような経験だった」

前作ではシンプルで漠然とした不安が描かれていたのに対し、今作はより踏み込んだ内容となっている。「『Kid Krow』の歌詞はというと『やぁ、僕はコナンっていうんだ、どうぞよろしく。僕が経験したことを聞いてほしい。10代の時に経験した失恋の話だよ』みたいな感じだった」。彼は握手をするふりをしながらそう話す。「でも今回のアルバムは違う。『僕の幼少期は悲惨だった。痛みは今も消えてない』」。低いしゃがれ声でそう言ってから、彼はクスクスと笑った。

実際に、彼の幼少期は不安定だった。彼は南カリフォルニアで生まれたが、母方の祖父が介護を必要としていたため、ほどなくして母親と一緒に日本へ移住した。米軍のキャリア組だった彼の父親は、家族と離れて過ごさなければならないことも多かった。コナンが3歳の時、家族全員で米国に帰国したが、その直後に両親は離婚している。それ以来、彼と姉は父と母の元を行き来するようになった。彼は2016年に公開した動画で「数えきれないほど引っ越した」と語っており、姉と母親の3人で暮らしていた小さなアパートを公開している。当時はクイーンサイズのベッドで、3人全員が身を寄せ合いながら寝ていたという。学校では主に白人のクラスメイトたちから頻繁にいじめられ、混血である彼のバックグラウンドがその引き金になることもあった。



”幼少期のトラウマと世代を超えたトラウマ”、そして苦難続きだった子供時代の経験にインスパイアされた「Family Line」は、『Superache』の核というべき曲だ。「本当の自分像を確立するためには、それを吐き出さなくちゃいけなかった」と彼は話す。「不遇だった子供の頃のことも、友達に話すのは怖くない。アルバムに収録するつもりはなかったんだけど、曲を聴いた友達みんながいちばんのお気に入りだって言ってくれた。自分の人生について率直に表現した曲をいいって言ってくれる、そういう人たちがいなきゃ生まれなかった曲かもしれない」

「Family Line」を公開することには恐怖を覚えるとしながらも、「聴き手の気分を良くするようなものだけが音楽じゃないはず」だとコナンは話す。「だからこそ、僕はあの曲をアルバムに収録することにしたんだと思う。今も昔も、僕が時々孤独を感じるのは事実だから。子供の頃の辛い経験っていう点では、心から共感できる人を見つけるのは難しいと思う。それって口にすべきことだと思ったんだ」(「Family Line」には家庭内暴力の描写が見られるが、それが彼の家庭で起きたことかどうかは定かでない)。

Translated by Masaaki Yoshida

 
 
 
 

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