ヴァンパイア・ウィークエンドが語るフジロック出演の真意、細野晴臣とダニエル・ハイムのこと

細野晴臣のサンプリングを振り返る

―『Father of the Bride』の「2021」という曲では、細野晴臣さんの「Talking」をサンプリングしています。昨年この2曲をカップリングしたスプリット・シングルもリリースされましたが、改めてサンプリングした経緯について聞かせてください。

エズラ:僕も類に漏れず、あの曲を最初に耳にしたのはYouTubeだった。というのも、作品としてアメリカでリリースされてなかったと思うんだ。アメリカではYouTubeであの曲を知った人がほとんどだと思う。実際「2021」を出した時、いろんな人から「あのサンプリングの曲知ってるよ!」と言われた。細野さんの作品を知ってなさそうな人からも言われた。「YouTubeで聴いた曲だ」って。僕もそうだった。曲がすごく好きだってのはもちろんなんだけど、そもそも彼があの曲を無印良品の店内用のBGMとして作曲したってことが面白いと思って、あれを軸に曲を書いたんだ。

幸い彼がサンプリングを許諾してくれたのもそうだし、あの曲のことを「新鮮だ」と言って褒めてくれたのには心打たれたし、光栄だった。さらに、スプリット・シングルを出せたのも凄くクールだった。サンプリングを申請する時というのは、許諾が降りるかどうかわからないし、ただいい加減にOKを出す人もいれば、深く関わりを持とうとしてくれる人もいる。そういう意味でもすごく嬉しかった。

それで思い出したんだけど、2018年にフジロックに出た時、出演前に1週間日本に滞在した際、アルバムの作業をするためにプロデューサーのアリエル・レヒトシェイドを連れてったんだ。彼は日本に行ったことがなかったから、「だったら僕たちと一緒に日本に来ればいい」と言ってね。で、彼と東京の街を歩いていた時に、無印良品の店にたまたま入ったら、「Talking」がかかっていたんだ。僕たちはずっとアルバムの仕上げ作業をしてたもんだから、思わず混乱してしまった。彼が無印良品のために作曲したという背景は知っていたけど、80年代の話だと思っていたから、まさか今も店内でかかっているとは思わなかった。それが、たまたま入った小さい無印良品の店でかかっていて、「おいおい、これはどこから聴こえてくるんだ?」ってなって、直ぐに店内でかかっているのがわかった。その時のことを今でもよく覚えている。




細野さんのロサンゼルス公演の際に足を運んだりしましたか?

エズラ:自分がLAにいなかったから行けなかった。細野さんに会ったことは一度もないんだけど、日本には今年たくさん行く予定だから、いつか会えたらいいな。ラシダがドラマの撮影で日本に行く予定なんだ。だから僕も一緒にしばらく滞在する予定。Apple TVのドラマで『Sunny』という作品だよ。

―好きな細野さんの作品はありますか?

エズラ:まあ、もちろん「Talking」はサンプリングしたくらいだから大好きだ。おそらく一番よく聴いて、人にも聴かせるのは1stアルバムの『Hosono House』だね。なぜなら、70年代は僕にとって一番好きな音楽の時代だから。70年代の音楽のサウンドが大好きなんだ。だから彼の1stは僕にとっては最高の70年代のロック・アルバム。一枚選ぶのは難しいけど、あのアルバムはとにかくたくさん聴いた。例えばグレイトフル・デッドやポール・サイモンやスティーリー・ダンとかが好きな、70年代ロック好きの友達とかにはいい入門編だ。アメリカでも知っている人が増えてきたけど、あのアルバムを友達に聴かせるとだいたい盛り上がる。「へえ、日本でも同じ時代にこんな音楽があったんだ!」てね。

Translated by Yuriko Banno

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