ジャック・ホワイトが語るロックの未来、生まれ変わった自分と新しいヘアスタイル

ジャック・ホワイト(Photo by Paige Sara)

ホワイト・ストライプス、ラカンターズ、ソロとして苗場を盛り上げてきたジャック・ホワイト(Jack White)が、2012年以来となるフジロックで2日目・7月30日(土)のヘッドライナーを務める。

音楽業界のウィリー・ウォンカは、最近落ち着きを見せるようになった。2022年現在、くすくすと笑う彼は過去2年にわたって砂糖を断っている。その2年間で、彼は完全に生まれ変わった。「パンデミックを経て、僕の人生のあらゆることは一変した」と彼は話す。「これが終わるのがいつになろうとも、その時には全く異なる人生観を確立していること。それが自分に課した目標だった」。

その結果として生まれたのが、4月にリリースされた『Fear of the Dawn』、7月22日発売の『Entering Heaven Alive』という、ホワイト・ストライプスを思わせるオールドスクールなサウンドから、ビートルズを彷彿とさせる実験性、王道のアメリカン・ジャズなど、多様で振れ幅の大きい2枚のアルバムだ。(カニエ・ウエストの『Donda』さながら)レコードをプレスしている段階でありながらまだエディットを加えているという完璧主義者のフロントマンは、ショッピングモールでのエピソードを交えながら、生まれ変わった自分とその過程について語ってくれた。



ーあなたはパンデミックの間に2枚のアルバムを完成させました。やはりじっとしてはいられなかったと?

ジャック:僕はあまり個人的なことを曲にしないんだけど、今回は病院や刑務所、あるいは保護施設とか、簡易ベッドで眠ることでビジョンや考えを整理することができる場所についての曲(「That Black Bat Licorice」)を書いたんだ。自分の限界に挑もうとしていて、1日に16時間くらい作業する時もあった。足の骨を折って入院すれば、作業を中断して作品を客観的に評価できるかもしれないなんて考えたこともあったよ。

(パンデミックの間に)家具作りを再開したんだけど、いい気分転換になった。曲作りから8カ月間も遠ざかったんだよ。いつの間にか忘れていた、創造の喜びを思い出すことができたんだ。

ーアルバムを2枚発表する理由は?

ジャック:かなりの数の曲を書いたんだけど、どれも方向性がバラバラだった。かなりヘヴィなやつもあれば、もはやスピードメタルみたいな曲もあるし、すごく穏やかなものもある。20~25曲くらいあったかな。最近は2枚組のアルバムって歓迎されないからね。できれば両方とも同じ日に出したかったけど、レコードを刷る以上、2枚同時リリースは現実的に不可能だったんだ。


『Entering Heaven Alive』の先行シングル「If I Die Tomorrow」

ー『Fear of the Dawn』では初めてサンプリングを導入しています。キャブ・キャロウェイの「Hi De Ho」をサンプリングした理由は?

ジャック:ある日キッチンにいた時に、ラジオで彼の曲を聴いたんだけど、ものすごく刺激を受けたんだ。それで曲の一部をサンプリングして、フィットするドラムパターンを考えて、次はベースライン、みたいな感じで曲を形にしていったんだけど、その過程でこう思ったんだよ。「Qティップのラップを乗せたらすごく面白いんじゃないか?」ってね。

その5分後、彼がトラックにスキャットを乗せて送り返してきた。僕は空間やスタイル、時間軸の異なるものを組み合わせるのが好きなんだよ。面白かったのは、曲を聴かせた人がみんな、キャブ・キャロウェイのパートを歌ってるのが僕だと思ってたことだ。「僕ってこんな声だっけ?」って感じ。変な話だけどさ。


Translated by Masaaki Yoshida

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