矢沢永吉が語る、50年かけて行き着いたライブ哲学

“腹七分目”っていう考え方

ー確かにそうですよね。それこそ矢沢さんは通常のライブでも、昔から「安物の時計」でストリングスをバックに歌ったりしていました。今回収録されている「安物の時計」は前半をアコースティック・ギターとピアノのみで歌って後半からストリングスが入ってくるアレンジです(ROCK’N’ROLL IN TOKYO DOME  2009年 東京ドーム)。これは素晴らしい名演ですね。

矢沢 さんきち(三好“3吉”功郎)のギターね? さんきちが出だしのギターを弾いたのを聴いて、「さんきち、それだよそれ!」「あ、わかりました!」って(笑)。

ー東京ドームの大観衆を前にして、あの少ない音数で歌うのは、素人目で見るとものすごく緊張しそうですけども、矢沢さんはもうああいうシチュエーションでも緊張しないですか?

矢沢 そんなことないです。緊張しますよ。僕はものすごく緊張する。どっちかというと一生懸命やる人だから。「それがよくないんだよおまえ!」って自分に言うんですよ。「そう緊張するなよおまえ、そんなに堅苦しくならないでさ。いいじゃん、とちっても」とか。「100%キメてやろうなんていうのはやめな、そろそろ」って。5万人も6万人も入ってるって考えたりしないで、「10mぐらいの円形でみなさんが聴いてくれているところで、俺は一緒に歌って楽しんでるんだよ」って思うようにしてます。腹七分目っていう考え方がいるよねって、最近すごく思います。

ーもう1人の自分と対話しているわけですか。

矢沢 そう。「もういいじゃん、完璧にキメようと思わない方が絶対素敵だから」って、最近は自分に言い聞かせてますね。もっとリラックスして軽く歌って、それがフラットしてもシャープしてもいいから、もっと自然に行く方がライブなんじゃないかなって。こんな50年やっている人間がそういうことを思ったりしているって、だからライブはいいのよ。僕はどっちかというと、真面目に「今日のステージはキメるんだ」と思って、歌ってるときに「ああっダメだ! Oh my God!」って思うことが多々あるんですよ。だけど、後でWOWOWで放送された映像を観たらさ、めちゃイイわけ(笑)。

ーははははは(笑)。

矢沢 「全然いいじゃない!」って。だから、ステージっていうのはそこまでがっちりキメてやろうっていうのを卒業しないとダメなんだよって、50年もやってるのにそういうことを思ったりするんだから。(ライブは)仕事なんだけど、僕は手にいい職を持ってると思いますよ。ステージをお仕事としてやらせてもらってるんだから。

●続きは「Rolling Stone Japan vol.19」でチェック!



EIKICHI YAZAWA 50th
ANNIVERSARY TOUR「MY WAY」
8月27日(土)・28日(日)東京・国立競技場
OPEN 16:00 / START 18:00
※雨天決行・荒天中止
9月18日(日)福岡・福岡 PayPayドーム
OPEN 15:00 / START 17:00
9月25日(日)大阪・京セラドーム大阪
OPEN 15:00 / START 17:00
https://eikichiyazawa.com/feature/50th_myway



Photo by Hiro Kimura
Styling by Kentaro Okamoto
Hair and Make-up by Masaki Tanimori
Edit by Hiroo Nishizawa

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