新世代ソウルの旗手、ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズが語る結成秘話

2ndアルバムの飛躍、ソウル復権の理由

インディケーションズの1stアルバムが嬉しいサプライズだったとすれば(「レコードを出したときは、自分達が何をしているのかわからなかった」とブレイクは語る)彼らの2作目『American Love Call』はより熟考されたレコードだ。いくつかの曲には、政治的な傾向が見受けられる。「Long Way Home」では、グループ唯一の黒人メンバーであるドランが、「警察や法律との向き合い方について書いた手記から、それらのクソッタレがいかに自分の世界をひっくり返したかについて引用した」のだという。「Morning in America」でドランは、教師たちのストライキ、デトロイトの不公平、オピオイドの危険性について触れている。「アメリカの朝だ」とドランは歌い、ロナルド・レーガンの選挙公約を引用しつつ、「でも、夜明けはまだ見えない」と続けている。




『American Love Call』は、「Is It Any Wonder」に惚れ込んだリスナーを喜ばせるだろう。それにこのアルバムは、今日のポップスのあり方と重なる部分もありそうだ。メインストリームの著名なブースターのおかげで、ローライダー・ソウルはより広く浸透しつつある。ブルーノ・マーズは「Calling All My Lovelies」の重なり合うハーモニーの中で、ローライダー・ソウルの人気曲であるビリー・スチュワート「Sitting in the Park」を想起させるような歌い方をしている。テヤナ・テイラーのR&Bヒット「Gonna Love You」はデルフォニックスをサンプリングし、21サヴェージとJ・コールの「a lot」もイースト・オブ・アンダーグラウンド「I Love You」におけるドゥーワップ調の落ち着いたトーンを拝借している。


「Morning in America」のシングルB面曲として発表された、アーロンが歌う「Cruisin’ to the Park」もバンド屈指の人気曲

そういった音楽が訴求力を取り戻しつつある理由について、アーロンは持論を展開している。「Spotifyで“chillin”という単語が奇妙なトレンドになっているよね。キッチンで“chillin”、勉強しながらchillin、みたいな感じで」と彼は冗談を飛ばす。とはいえ、ストリーミングの普及と、ダウンテンポの曲を好むストリーマーの存在はシリアスに受け止めるべきだろう。アーロンはこう説明する。「そのおかげで、ハイパーファンクな究極のブレイクビーツを作るだけではない、もっと“控えめ”でダイナミックな表現に取り組むことができるわけだ」。

そういった傾向を踏まえて、シンガーたちも躍動的でフル回転するような曲から離れつつある。「多くのアーティストが僕らと同じ道を歩もうとしているのは興味深いね」とアーロンは語る。彼は決して文句を言っているわけではない。

From Rolling Stone US.


インディケーションズは2021年に3作目『Private Space』を発表、ディスコ・ビートを導入するなど音楽性の幅を広げている



The EXP Series #38
ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズ来日公演
2022年7月14日(木)、15日(金) ブルーノート東京
詳細:http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/durand-jones/

Translated by Rolling Stone Japan

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE