小田和正、8年振りアルバム『early summer 2022』を朝妻一郎と紐解く



田家:流れている2曲目「坂道を上って」。

朝妻:これは映画のために書いた曲なんだけど、頭のサブギターがすごくかっこいいなと思って。

田家:映画『坂道のアポロン』。ギターの音色も小田さんは研究している?

朝妻:いろいろなアーティストのレコード、CDを聴いて、あ、これはいいなとか、本当にいっぱい音楽を聴いていますよね。

田家:昔からそういうことをしていらっしゃる?

朝妻:昔からそうだと思う。今でも新しいものをいっぱい聴いているんじゃないかと思うね。

田家:実は今週、朝妻さんにもう1つの選曲案を選んでいただいて、このアルバムとは別に今まで出会ってきた中での印象的な曲。その最初の曲が1973年の「僕の贈りもの」でした。

朝妻:それはなぜかって言うと、そもそも僕は小田くんと知り合ったのは、田家さんも彼について本を書かれているCMプロデユーサーの大森昭男さんが「朝妻さん、誰かいいアーティストいませんか?」って言ってきて。そのとき、東芝からオフコースというグループが出て、でも当時は小田くんが曲を書いてなくて加藤和彦くんとか、東海林修さんが書いた曲を小田くんと鈴木くんが歌っていたわけ。だけど、そのコーラスがすごくよかったので、「大森さん、このオフコースっていうグループいいですよ」っていうので紹介したら、最初はアメリカ屋っていう靴屋のコマーシャルで使ってくれた。その後、大森さんが気に入ってくれて、次に味の素がマヨネーズを出すときにまたオフコースを使ってくれた。そのときに曲はあったんだけど、小田くんがイントロをくっつけてコマーシャルが完成して、そのイントロがすごくいいと言うので、イントロを伸ばして「僕の贈りもの」になったわけ。そこで僕と小田くんとの付き合いができた。

田家:「坂道を上って」の中には〈僕らはみんな大人になっていった〉という歌詞がありますが、今の朝妻さんの話を頭に置きながら歌詞を聴くとどんなふうにお聴きになられるでしょう。朝妻さんがお会いになった頃はまだ大人じゃなかったでしょうからね(笑)。

朝妻:両方ともね(笑)。

田家:小田さんが大人になったなと思われたのはどのへんですか?

朝妻:今回のアルバムを聴くと、世の中の人を守ってあげたい気持ちがすごく出ているんだよね。初期を聴くと、自分の気持ちとか自分と相手がどうかという狭い関係だったのが、今はみんなを幸せにしたいという気持ちになっているところが全体として感じられる。

田家:なるほどね。ライブは特にそういう感じがしますよね。この曲は映画主題歌ですけども、小田さんは映画監督で2本作ってらして、映画監督は小田さんのキャリアの中でどういう影響をもたらしていますか?

朝妻:やっぱり映像と音楽というのって不可欠なものだけど、映画を作ることによって小田くんの詞の世界も広がった気がするな。

田家:より大人にならざるをえなかったところもあるんでしょうし(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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