小田和正、8年振りアルバム『early summer 2022』を朝妻一郎と紐解く



田家:アルバム4曲目「この道を」。朝妻さんはこの曲も選ばれております。ドラマが書かせてくれた曲ですね。

朝妻:海堂尊さんの小説って医学本だけど、ストーリーもおもしろいし、小説も好きだしこのドラマもおもしろかったですよね。

田家:TBS系日曜劇場『ブラックペアン』。原作は海堂尊さん。タイトルになっている「道」という言葉で思われることはどういうことですか?

朝妻:「道」と「風が」ある部分小田くんの1つのテーマになっている感じがするよね。

田家:このアルバムは「風」と「道」のアルバムという感じですよね。

朝妻:そう思う。同じ時期に書いたんじゃなくて、間が空いたにも関わらず「道」と「風」は小田くんの1つの人生に対しての見方になっている気がする。

田家:この曲の中に〈繰り返す迷いも争いも悲しみもすべて時に任せて選んだ道を行く〉その後に〈誇りと正義のために戦う自分がいるはず〉。

朝妻:それもさっきの「生まれ来る子供たちのために」に繋がる詞ですもんね。

田家:小田さんは正義感の強い人ですよね。

朝妻:正義感があって、「生まれ来る子供たちのために」も、なんで政府なり時の権力者たちが動かないんだということに対する苛立ちとか、やりきれなさみたいな気持ちがすごく出てましたもんね。

田家:同じ海堂尊さんの原作映画がありまして、2011年『ジーン・ワルツ』。このときも主題歌「こたえ」を書き下ろしている。小田さんと海堂尊さんは合うのかもしれませんね(笑)。

朝妻:たぶん海堂さんも比較的世の不条理ってことに対して、医学という面から取り組んでいる感じがあるので、心情的には合うのかもしれませんね。

田家:医学と建築ですからね。小田さんが道を見失ったとか、道に迷った時期はあったと思われますか?

朝妻:それは全然記憶にないんだけど、道をどっちへ行ったらいいかなって思ったんだろうなというときがあって。小田くんが5人のオフコースになって、今まで自分が録音したアルバムをアメリカ人のミキサーでやってみたいと、「それで誰かいいミキサーを知りませんか?」って聞いてきた。そのときに僕は誰がいいかなと思って、パブロ・クルーズていうA&Mのアーティストがいて、アルバムの音がすごくよくて、この「ビル・シュネーという人がいいよ」って言っていたら、「ボズ・スキャッグスをやっていたしいいね」と言うので、小田くんもOKしてくれて、アメリカに連絡してビル・シュネーにコンタクトをとって、ビル・シュネーのスタジオで『We are』のリミックスをしたの。そしたら、ビル・シュネーと小田くんがハモっていい関係になって。そこから小田くんもアメリカでいろいろ仕事してもいいかなって気持ちになってきたんだけど、「誰かいい人知りませんか」って言われたときにビル・シュネーを思いついて紹介したことが、小田くんこっちの道がいいですよって言ったことになって。それが本当に正しい道だったんじゃないかと僕は思っているんだけどね。

Rolling Stone Japan 編集部

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