小田和正、8年振りアルバム『early summer 2022』を朝妻一郎と紐解く



田家:アルバムの7曲目「こんど、君と」です。これは「みんなのうた」60周年の歌。

朝妻:僕も今回初めてあ、そうなんだって聞いたんだけど。

田家:「みんなのうた」のような番組は、朝妻さんのように洋楽に精通してらして洋楽を日本のポップスにどうミックスさせられるかと考えてらっしゃる方にとって、どういう番組ですか?

朝妻:あれはあれで1つの使命を持っていて、あそこから出てくる曲は洋楽オリエンテッドの曲とは違う浸透の仕方をしていく。日本の流行歌、あるいはポピュラーミュージックを作っていく1つの重要な番組だと思う。

田家:小田さんは「みんなのうた」が初めてかなと思ったら、1975年に「老人のつぶやき」という曲があって、「みんなのうた」で不採用になったエピソードがあると、事務所の吉田雅道さんが教えてくれたのですが。

朝妻:結構ビッグネームでもNHKってちょっとスケジュール的に合わないからとか言って、断られているケースがありますよね。

田家:ビッグネームでも断られるわけですから、1975年のオフコースは(笑)。

朝妻:ビッグネームのビっていうあたりだったからね、まだ(笑)。


左から朝妻一郎、田家秀樹

田家:コメントには「今回の「こんど、君と」は「みんなのうた」ということと、コロナ禍に対する気持ち。色合いの違う2つの内容をどう紡ぐかがテーマだった」とあります。

朝妻:たぶん小田くん自体は、ここでコロナをある程度気にしてたかもしれないけど、アルバム全体を聴くと、他の曲でも人と人との繋がりを重要だと通して言っているんだよね。コロナで1番インパクトを与えたのは、マスクで顔の表情が見えない。なおかつ、学校にも行けない、人とも会えない、コンサートもできない期間がすごい長くて。やっぱり人と人が会って話すことがいかに重要か、コロナで証明されたと思う。この間、6月3日に福島で1回目の小田くんのコンサートがあったんだけど、最後の方に「あ、これだけの人のところでこれだけのコンサートができたんだ」という想いで、ちょっと本人も涙ぐんでいたところがあるんだけど、その気持ちがすっごく分かった。それだけ人が集まって、人が出会って、小田くんとも出会ってということが実際に起きること、いかにコンサートが重要か。あるいは人と人とが接するということがどれだけ重要かってことを、すごくはっきりと示していたと思うね。

田家:そういう瞬間を思いながらこの曲を書いたんだと思いますね。歌詞を書いたというよりも、心の言葉が歌になったアルバムという気がしました。

朝妻:本当にそう思う。だから、アルバムのジャケットがドローイングで描かれているんだけど、あのアルバムジャケットを見ただけで全部の風景が浮かんでくるような感じがするんだよね。

Rolling Stone Japan 編集部

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