眞島秀和が語る、『破戒』が描く差別問題と縁を大事にする生き方

そう言って、目を細めながらタバコに火をつける。アメリカンスピリットをずっと愛煙している彼にとって、コーヒーもタバコも欠かせない存在だという。

「三軒茶屋の茶沢通りにあった『コーヒーハウス・シャノアール』が大好きだったんですよ。喫煙もできるし広々としていて落ち着いて長居ができるので、もうかれこれ20年近くそこで台本読みをしていたんです。ところが、最近コロナ禍の影響なのか閉店してしまって。とてもショックを受けていますね。仕方ないから最近は自分の家で、コーヒーをドリップして飲みながら吸っています」

映画に話を戻そう。冒頭で述べたとおり『破戒』は日本に江戸時代からある部落差別をモチーフとして描かれた物語である。人の心に宿る「差別」の感情について眞島はどのように考えているのだろうか。

「難しい問題ですよね。『破戒』は明治後期が舞台の小説ですが、あれから100年以上経った今も差別は厳然としてある。ここで描かれている部落差別はもちろんですが、それだけでなくいろんな差別意識が実は以前よりも細分化されているような気がしていて。今はネットなど便利なものが身近にありますが、だからこそ自分とは違う意見を持つもの、自分とは違うバックグラウンドや容姿を持つものに対してのバッシングが先鋭化してきているように思うんです」

「匿名」という笠を着て、見えないところから相手を攻撃するぶん、いくらでも残虐になれる。眞島が指摘するように、「大勢で寄ってたかって」という行為もネット空間では際限なく行われている。映画の中で猪子蓮太郎が言う、「もし今の差別がなくなっても、また別の差別が生まれる」という言葉が心に深く突き刺さる。



「まさにそうですね。今は携帯一つで他人の命を殺めることすら容易にできてしまいますから。あのセリフは今のこの時代に対するメッセージに違いないですし、僕らはそこにどう向き合っていけばいいのか。簡単には答えを出すことのできない難しい問題だと思っています」

誰しも多かれ少なかれ「差別意識」を内包し、それをコントロールしながら生きている。映画の中で丑松が、教育の大切さについて訴えるシーンが印象に残る。感情や意識をコントロールするために、何より必要なのは「知ること」であり、そのために教育が果たす役割は計り知れない。

Photo = Mitsuru Nishimura Hair and Make-up = Yuuka Saeki

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