Aile The Shotaが語る、ナチュラルに作り続けることの先にある「本質」

「媚びないキャッチーさや説得力があるJ-POPを作っていきたい」

—Shotaさんがいろんな人と一緒にやるのは、なぜ? 「好きだから」の一心?

好きだから(笑)。「この人のビートでやりたい」「この人にフィーチャリングで出てほしい」っていう。「誰にオファーしようかな」という幸せな悩みを、毎回制作のときは抱えています。

—いずれフックアップしたい、みたいな気持ちもありますか?

ありますね。僕の中で一個夢としてあるのは、以前お世話になっていた先輩のラッパーとか、オーディション(『THE FIRST』)を受ける前に一緒に音楽をやっていた仲間を集めてEPを作ること。ターニングポイントを経て出会った人たちと、僕のルーツとして仲間でいてくれる人たちが一緒になる世界線があったら、それもまた一個夢が叶う瞬間だなって思います。着々と曲を作って出している後輩とかもフックアップしたいなって思いますね。

—まだオーバーグラウンドに出ていないジャンルをみんなに届けられたら、みたいな気持ちもありますか?

そうですね。オーバーグラウンドの形がどんどん変わってきていると思うんですけど。この間『POP YOURS』で、ヒップホップの持つ力が日本で大きくなっているタイミングだなと思いました。今の日本の音楽シーンは何かのきっかけで変わりそうだなと思っているので、僕も少なからずそこで面白い動きはしたいなと。誰とやってもかっこよく曲を作れる存在でいたいし、僕がリスペクトするアーティストの方にリスペクトされる存在でいたいと思っていて、その状態で架け橋みたいな存在になれたら、それ以上嬉しいことはないかなと思います。

—それをできるのがShotaさんならではですよね。立ち位置としても、自分が本当に好きな音楽や、持っている声の性質としても。

BMSG(SKY-HIが主宰する事務所)にいるAile The Shotaだからこそ。たしかに僕の声質が、幅広いビートの上を泳いでも保ってくれるというか。Lo-Fiと80’sって結構な落差だと思うんですけど、それらがちゃんとまとまって、1枚のEPとして聴ける形にできたのは「よし」という感じがしています。

―どんなトラックでもJ-POPのメロディラインに仕上げてくるこだわりも、Shotaさんがいろんなシーンを繋いでオーバーグラウンドに持ち上げてくれる要素になっていますよね。

媚びないキャッチーさや説得力があるJ-POPを作っていきたいなと思いながら、「Aile The Shotaポップ」を自分の中でも掴んでいってる感じはありますね。

―『IMA』の楽曲について、1曲ずつ聞かせてください。1曲目は「so so good feat. Ma-Nu」。SIRUPなど11人のアーティストやクリエイターが集まるクルー・Soulflexより、「AURORA TOKIO」にはKenTさんがサックスとフルートで参加していましたが、今回はMori Zentaroさんがトラックを作ってMa-Nuさんがラップするという。ShotaさんのSoulflex愛が詰まってますね(笑)。

大ファンの皆さんと一緒にやらせていただきました。今回は絶対にZentaroさんのビートでやりたくて。ラッパーをフィーチャーしたいと思っていたところ、Zentaroさん側から「Ma-Nuっているんですけど……」ってきて、「いやいや、知ってるどころの騒ぎじゃない! いいんですか?」ってなって(笑)。曲のテーマは、このビートをもらって、リリックとメロディを書こうとスタジオに入ったときのバイブスですね。“強炭酸のサイダー”というリリックは、本当に飲んでいて「朝からサイダーを飲むって、1日の勢いがついてなんかいいな」みたいな。家からスタジオに向かって歩いている風景そのままです。こういう曲の書き方は好きだなって、再確認しましたね。



―Soulflexは、どういったところがそこまで好きですか?

きっかけは、友達がSoulflexを聴いていて、「SIRUPってクルー入ってるんだ。そんな贅沢なことある?」と思いながら自分も聴き始めたことで。「Integral」という曲を最初に聴きました。Soulflexは、キャッチーさと、わかりにくいことをやってるはずなのにわかっちゃうエグさみたいなものが、それぞれみんなすごくて。本当に1人ずつかっこいい。illmoreさんが所属してるChilly SourceのイベントにSoulflexがゲストで出たときに見に行って、生バンドを見てしまってさらにハマりました。

—実際、今回一緒にやってみてどうでした?

この曲を作ってる段階で、何回か夢が叶った瞬間があって。オファーのときも「Zentaroさんがよく使うあのシンセみたいな音が好きで」みたいな(笑)。しかも俺のあとにMa-Nuさんがラップを入れてくれて……「Soulflexやん、俺」ってなりました(笑)。本当に嬉しかったですね。これもポップスという背骨は持たせたかったし、客演でMa-Nuさんがいるからこそサビをキャッチーにしたかったので、サビのトップラインはめちゃくちゃ苦戦しました。ファンすぎて、僕が作ったトップラインの中に「あれ? なんかSIRUPくんがいるな?」みたいなことをなんとなく感じちゃうんですよね(笑)。Aile The Shotaオリジナルのものを出せるようにすごく模索しました。でも結果的に「ちゃんと踊れるけど、ちゃんとキャッチー」というバランスを作れたかなって思います。レコーディングはZentaroさんも立ち会ってくれて、細かくディレクションしてくださって。Zentaroさんの性格を感じました。「とことん突き詰める人だ」って。すごく勉強になりましたね。

―サウンドは力の抜いたチルい感じに仕上げていても、それを作り上げるまでの過程はストイックなんですね。

いやもう、ボーカルディレクションも、キーとか直そうと思えば直せる部分も生音で録りたいと思ってくれていて。僕も歌にめちゃくちゃ熱が入りました。あと、Zentaroさんがメンバーのことをめちゃくちゃ褒めるのがかっこよくて。「ZINは本当にすごい」とか。

—無理矢理つなげるわけじゃないけど、「人を愛する」「蹴落とさない」みたいな精神は、もしかしたらSoulflexとBMSGで通ずるところがあるかもしれないですね。

そうですね。仲間同士をリスペクトしていて、それを当たり前と思っていない感じもすごくかっこよくて。「それを言えるクルーって、なんてかっこいいんだ」と思って、もう完全に惚れました(笑)。Soulflexとかっこいい曲を作れたことは自信にもなりますし、過去の自分に「お前すごいぞ」「やってること間違ってないよ」って言えるなと感じます。

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Photo by Kentaro Kambe

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