Aile The Shotaが語る、ナチュラルに作り続けることの先にある「本質」

「夢の中くらいは自分だけの桃源郷であってほしい」

—では3曲目「IMA」に関して、KNOTTさんを招いた背景は?

KNOTTさんは日高さんの紹介で。「Shurkn Papの『Road Trip』みたいなドラムの打ち方で1曲作ってみたら?」みたいなことを言ってくれて。もともと、DREAMS COME TRUE「YES AND NO」のShurkn Papくんが入っているリミックスと、Shurkn Pap feat. Jinmenusagi「ミハエルシューマッハ」を、2曲ともKNOTTさんが関わっていることを知らずにめちゃめちゃ好きで聴いていたんです。この煌めきの感じと、今USでのポップスシーンできてる「STAY」(ザ・キッド・ラロイ&ジャスティン・ビーバー)のドラムの打ちとかをやりたいなと思って打ち合わせをさせてもらいました。「ハイスピードに環境が変わっていくのを疾走感と重厚感のあるトラックに乗せて、そこにJ-POPのエモーショナルさを足せる曲にしたいですね」ということと、宇宙感、星雲、ピンクの感じとか、僕の超ふわっとしたイメージを話したら、それをすごくキャッチしてくださって。トラックをもらったときにすごいなと思ったと同時に、「これは難しいのがきた」とも思いました。



—このトラックに日本語のメロディを付けるのはなかなか難しそうですよね。

一番時間がかかりました。このビートだとどうしても英語がハマりやすくて、日本語を使ったJ-POPとして成立させてダサくならないようにするためにめちゃくちゃ時間がかかって。日本であの打ち方でやってるシンガーってなかなかいなくて、出てこないということは難しいからなんだろうなとは思っていたんですけど、だからこそ絶対にやりたいタイミングじゃないですか。ザ・ウィークエンドがやって、「STAY」が出て、イアン・ディオールとかリル・ナズ・Xもやって。今やらないと日本で先に誰かにやられちゃうと思ったので、今このトラックに乗っておきたいなという気持ちがありました。

—結果、すごく耳馴染みがよくて中毒性の高い楽曲になりましたね。

耳馴染みはやっぱり大事にしたくて。聴いていて疲れない感じと、音としてかっこいい感じは保っておきたい。最後の最後に日高さんに相談しました、「サビで“ヤバい”って言ったら面白いですかね?」って(笑)。バースで結構強いことを言ってるから、フックのノリは軽くして聴きやすくしたいなと。「いいんじゃない?」という後押しをもらってやっと書けました(笑)。

—たしかにサビの入りがもっと堅苦しい言葉だったら、また全然違う感じの楽曲になってそう。

そうなんですよ。重たくなっちゃって、疾走感とかなくなる気がして。サビを“ヤバいくらいのハイスピード”というフレーズで始められたのが、この曲をちゃんと完成させられたポイントだったかなって思いますね。

—最後の「夢宙」は、さきほども話に出たChilly Sourceのillmoreさんがサウンドプロデュースを手がけていますが、illmoreさんを選んだ理由は?

こちらも大ファンでして(笑)。ダンスを始めて日本のR&Bやヒップホップにハマった時期に、Chilly Sourceもめちゃめちゃ好きになって。Chilly Sourceのコンピアルバムが超好きで、illmoreさんがプロデュースしたアルバムも聴いてたし、インストで踊っていたくらい好きでした。オーディション前にやっていたソロのときからLo-Fiに乗るのが好きだったので、2nd EPで1曲、没入感のある世界観が強いものを作りたいなと思って、「illmoreさんと1曲、夢の中みたいな曲をやりたいです」とオファーをしたら快くOKしてくださって。すっごく優しい方で、これも楽しかったですね。どの曲でもそうなんですけど、ビートをもらったときに「これに俺が乗れるんだ」と思って。「夢宙」も夢が叶った曲ですね。



—「夢」をテーマにしたのは、どういう想いがベースにあったからですか?

見えすぎる世の中に疲れるときもあるから、夢の中くらいは自分だけの桃源郷であってほしいなあと。現実逃避できる曲がほしいなと思いました。逃げたいと思う瞬間は今後もあるだろうし、誰しもにあると思うので、そういうときに聴ける曲を作りたいなと。ふわっと聴けるような浮遊感がありつつ、曲としてかっこいいものに仕上がりましたね。

—「IMA」も「夢宙」も、夢が叶っていることの嬉しさや幸せももちろんありつつ、それだけではない感情がこぼれ落ちていることを感じるんですね。

そうですね。「IMA」に書いているようなことはやっぱり大事にしていたいなと感じます。環境がぐわーっと変わって、たくさんの人に見ていただけるありがたいチャンスをいただく中で、なんとなく、僕が届けたい本質が届かないなと思う瞬間があったりして。そこの難しさみたいなものは感じています。「IMA」を書くときが、求められているものに自分が応えようとしちゃって無意識のうちに変わってしまいそうなことに気づけたタイミングで。“誰かの腹を満たす 正しさは求めていない”というのは僕の中でも強い気持ちでした。やっぱり何にも寄りたくないし寄せたくはないし、誰に変わるわけでもないし。僕の動きも、BMSGという事務所の動き自体も、前例がない感じだと思うので。この一行は僕の中でパンチラインというか、伝えたいことを書けてよかったなと思えるものです。

—深掘りして聞いちゃうと、誰のどういう言葉に「惑わされているな、自分」みたいなことを感じますか?

やっぱり、ボーイズグループを目指すオーディションの出身なので、その余波で、ボーイズグループを志していた者として見られることがあるというか。アイドル性みたいなものは僕の中でもう置いていて。ありがたさの反面で本質が届きにくいということは、感じるんですよね。それを音の上で言おうかなと思って書きました。スタンスとして言いたいことも言えないのは違うなと思ったので、“どこに居たって my way”で。僕はあのオーディションで「音楽ファースト」という言葉に出会えてよかったし、あのオーディションを経験したからこそ「音楽ファースト」で届けていきたいというマインドがあると思います。BMSGという夢を叶え続けさせてくれる場所で、イケてることをやり続けたいなという感覚です。


Photo by Kentaro Kambe

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