50
「Jamais Vu」(2019年)


フランス語で既視感を意味する「デジャヴュ」は聞いたことがあるかもしれない。だが、JIN、J-HOPE、JUNG KOOKがここで歌っているのは、「ジャメヴュ」という聞きなれない心理現象だ。「未視感」と訳されるこの状況は、何度も経験していることを前に、それが初めてであるかのように感じられることを意味する。この曲は、表面上は美しい子守唄のように展開する。だが、ボーカリストたちが繰り返し同じ痛みを経験しながら救済を求めることの辛さを歌う一方、その背後にはBTSのもっとも暗い時代が潜んでいる。—N.M.

49
「So What」(2018年)


直球の鉄壁EDMに「心配事なんて忘れて、ペンライトを上げて!」と言いたくなるような爽快な激励ラップが加わった「So What」。仲間とシンクロしながら両手を上げて音に合わせて振ったり、飛び跳ねてはしゃぎまわったりするのにぴったりな爽快感あふれる、インタールードに事欠かない曲だ。ラッパー、ロブ・ベースの「It Takes Two」のフロウ全開で放たれるRMの“まだ死にたくなんかない”というラップパートは、BTSのグレーテストモーメント トップ10入り必須。—C.A.

48
「My Time」(2020年)


BTS最年少のJUNG KOOKは、メンバーに育てられたと言っても過言ではない。15歳の美少年ラッパーとしてキャリアを歩みはじめた彼は、自信に満ちたタトゥー好きのボーカリストへと成長し、スタジアムで圧巻のパフォーマンスを披露するまでになった。「My Time」でJUNG KOOKは、透明感あふれるポップなボーカルをR&Bの領域まで高め、スポットライトを浴びながら、まるで異なるタイムゾーンをまたぐかのように、急いで大人にならなければならなかったことを回想する。“どんな時も、僕の人生は映画のようだった”と、JUNG KOOKは感慨深そうに歌う。JUNG KOOKが言うように人生が映画だとしても、エンドロールはまだ先のことだろう—N.M.

47
「Sea」(2017年)


砂浜に優しく打ち寄せる波の音とともに始まる「Sea」。当初は「希望のあるところには必ず試練がある」(村上春樹の小説『1Q84』からの引用)というタイトルで呼ばれていたエモーショナルなこの曲は、『LOVE YOURSELF 承 ‘Her‘』(2017年)の隠しトラックだ。「Sea」は、BTSがスターダムへと駆け上がる際に直面した内なる葛藤や困難を歌っている。「『彼らはナンバー1で、いろんなものを持っている。それなのに、どうして不安なのか?』と世間はいつもこんなことを言います。もし、あなたがARMYのひとりで、2013年から2014年にかけて僕らと同じ時間を過ごしていたら、わかってくれるでしょう」と、RMはこの曲について米ビルボードに語った。「もっと特別で、僕らの心の近い場所にあるような楽曲です」—N.M.

46
「Dynamite」(2020年)


「Dynamite」の共作者兼プロデューサーを務めたロンドン出身のデヴィッド・スチュワートは、この曲を「K-POP曲」と呼ぶことを拒んだ。なぜなら、BTS初の全編英語詞曲「Dynamite」は、アメリカン・ドリームを追い求めた彼らの約10年間の道のりの集大成だから。パンデミックの陰鬱なムードに挑んだ「Dynamite」は、瞬く間にビルボードのシングルチャート・HOT100の頂点に輝き、センセーションを巻き起こした。若き天才JUNG KOOKは、弾けんばかりのポップな歌声で私たちを虜にし、アメリカらしいキーワード(レブロンやキングコングなど)をRM、J-HOPE、JIMINにバトンタッチする。すると彼らは、シンセベースと陽気なディスコ風のハンドクラップつきのコーラスの上をするりと滑るようにクールに続ける。だが、それだけではない。アップタウン・ファンクらしい管楽器やギターのサウンドに導かれながら、V、SUGA、JINは美しい隊列を組んで虹と虹の間を飛行するブルーエンジェルス(訳注:米海軍所属のアクロバット飛行隊)のような清々しい正確さで曲全体に浮遊感を与える。パンデミックのことなんて、きれいさっぱり忘れさせてくれる。—C.A.

Translated by Shoko Natori

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